第13回セミナー「うんと知りたいトイレの話」報告

「うんと知りたいトイレの話」第13回(2022年5月19日)
「プロが教える!家庭でできるトイレ掃除 & トイレ診断士の世界」
白倉正子氏:アントイレプランナー 代表、日本トイレ協会運営委員
山戸伸孝氏:(株)アメニティ 代表取締役社長、日本トイレ協会運営委員

第1部:プロが教える!家庭でできるトイレ掃除(講師:白倉正子氏)
第1章 私とトイレ掃除
女性トイレ研究家と名乗って26年が経過した。
トイレに関係するイベント企画、講演執筆などをやっている。
日本トイレ協会の運営委員で、メンテナンス研究会の副代表幹事と事務局長でもある。
大学の卒論でトイレのことを書いたことがきっかけで、女性トイレ研究家になろうと決めた。
当時は、トイレ掃除は惨めな仕事というイメージだったが、私は、それはとても失礼なことだと思った。トイレを知るために、トイレ掃除修行を自ら始めた。

第2章 トイレ清掃のコツとトイレ特有の汚れ
トイレの代表的なよごれの一つ目は、尿ハネ。
2015年に株式会社ライオンが行った調査では、男性が立ってオシッコすると1日約1人分で2300滴はねているという。腰掛式便器の奥を狙ってオシッコすると、7550滴はねるという。
二つ目に、よごれとして代表的なのが尿石。
尿は茶色く固まってくる。ひどくなるとコンクリートより硬くなるなどと言われていて、厄介。
実際は見た目も悪いし、ニオイもあるし、詰まりの原因にもなると言われている。
尿石の成分は卵の殻と同じ炭酸カルシウムで、酸性洗剤で溶かすことができる。
三つ目のよごれは、カビと尿石。
入り込んだところでは、トイレ掃除のブラシがよごれに届いていないことがあるので、トイレブラシを見直す必要がある。
代表的なよごれの四つ目は、水垢、ほこり。
水垢は大変頑固で、大きく分けて2種類ある。
一つ目は、水道水のカルシウムなどのミネラル分がついたもの。
これは、クエン酸や重曹で除去できる。
もう一つは、水道水のケイ酸カルシウムがついたもの。
これは頑固で、研磨剤のようなもので削らないと取れない。しかし、それだと、便器表面の釉薬に傷がついてしまって、その新しい傷に汚れが入って、二度と取れないという状態になってしまう。
なので、水垢が付きにくくすることが大切。トイレのタンクに重曹の粉を入れておくと、付着しにくい。
実際ついてしまったものを取る方法のうち、2つを紹介する。
一番身近な方法として、粉状の重曹でこすると簡単に取ることができる。
もう一つは、陶器用の水垢を取るスティックが売られている。
大便による汚れは、水分で柔らかくすれば十分落とせるので、あまり深刻ではない。ただ、やはり不衛生なので、除菌はした方がいい。
●トイレ用の洗剤の選び方。
ホームセンターやドラッグストアでトイレ関連の洗剤類が売っているコーナーでは、たくさんの商品があるため、どれを買ってよいか悩んでしまうが、以下の5つに大きく分類できると思う。
(A)便器や周辺を綺麗にするために使用するもの。
(B)置くだけで消臭効果や除菌効果があるもの。
(C)排泄直後の悪臭を消すもの。
(D)一晩浸すと長年の汚れが取れるもの。
(E)便器をよごれにくくするためのコーティング。
それぞれの洗剤に、範囲と限界がある。目的と効果の組み合わせがちゃんとできているかがポイント。
使える対象や、洗剤が持っている性能を理解するためには、使用説明をしっかり読むことが大切。
今は、手軽な使い捨て清掃グッズが流行っているが、これらは頑固な汚れには向いていない。
便器のメーカーは、便座や便蓋などのプラスチック部分を乾いた紙で拭かないでください(傷がつくので…)と表記している。一方で、最近のスプレータイプの洗剤には、トイレットペーパーに吹き付けて使ってくださいと表記されている。よって紙に吹き付ける場合は、紙全体にその洗剤を吹き付け、乾いた部分をなくしてから使うと良いのではないかと思う。
●トイレ用洗剤の範囲と種類。
中性洗剤は日々の簡単な汚れに向いているが、頑固なよごれには向いていない。
酸性洗剤はオシッコのよごれに有効。アルカリ性洗剤は、手垢、カビ、油、除菌などに効果がある。
尿石とカビの汚れには、酸性とアルカリ性の両方が必要になる。
なので、酸性、中性、アルカリ性の3種があると心配がないということになるが、塩素が入っている洗剤と酸性の洗剤を同時に使うと有毒ガスが発生してしまうので注意が必要。どうしても両方使いたい場合は、前の洗剤を水で十分に流してから使うとか、別の日に使うように注意が必要。
よごれが頑固な場合は1回で落とそうとしないで複数回に分けるということも大切。
酸性としてクエン酸、アルカリ性として重曹、それに中性のものの3種なら安心できる。
重曹とクエン酸は基本的に混ぜても大丈夫。ただし、両方一緒にやると中和してしまい、効果が薄まってしまう可能性があるので、基本的には別々に使うほうがよい。ただ、泡立たない。
クエン酸にも重曹にも使わない方が良い素材がある。例えばクエン酸の場合、アルミ、鉄、大理石、セメントなど。
これらのものを使わなくて済むように、日頃からこまめに掃除をして中性洗剤で済ませる方がよい。
頑固な汚れに対しては、最近は、ジェル状の洗剤が誕生している。これは、汚れに密着できるので、ちょっと時間をおくと、頑固な汚れも取れやすくなる。クエン酸の粉とか重曹の粉でも、ぬるま湯で溶いて片栗粉を少し入れると、同じ効果のものを安価で手作りできる。
●トイレ清掃の心構えと手順。
経営者の世界では、トイレ掃除をすると経営がうまくいくなどの成功話を聞く機会が多い。なので「得をするかも!」という気持ちで掃除をすると苦手意識が薄まるだろう。服装は、エプロン、ゴム手袋、マスクなど。
清掃の順番は、上から下、奥から手前、軽い汚れからひどい汚れという具合に行うと良い。例えば、トイレの場合は、天井、換気扇、壁、便器の奥のほこり、便器周辺、便器、床、洗面器、除菌作業という順番を勧める。
手鏡は見えにくい汚れを見るのに役立つ。
雑巾について、一般的にはマイクロファイバークロスを勧めている。トイレはデリケートなので、普通のタオルではプラスチップ部分が傷ついてしまう。マイクロファイバークロスなどの柔らかいものを色違いで4枚準備して、例えば便器用、洗面台用というように色分けして使うとよい。
それから、洗面台を拭くスポンジ、トイレ用ブラシ、いらなくなった歯ブラシや靴を洗うようなブラシ、いろいろな形の細かいところに届くブラシがあると効果的。

第3章 設備別のメンテナンスのやり方。
和式便器では、「きんかくし」と呼ばれるドーム型の裏にオシッコの汚れがある。
それから、水が流れるところの奥の部分にブラシが届かず、うまく掃除できないケースがある。その場合にはゴム手袋を付けて、手を入れて掃除する。
便器の横の部分にはオシッコよごれが付きやすく、においのもとになる。
タイル張りの床は、目地にオシッコが染み込んで、大変くさくなりやすい。しかし、酸性洗剤で洗うと目地が溶けてしまう。そういった場合には、プロに任せて、コーティングをすることを勧めている。
ちょっとした汚れの場合には、酸性洗剤をまいて、なるべく早く十分な水で洗い流すとよい。
次に、洋式便器のよごれ。
便座の付け根は男性の尿で汚れる。便器の外側の部分や床の部分、便器の縁のリムと呼んでいる部分、便座の裏側、便器の奥などが汚れがち。鏡等を使って見づらいところを確認する。
リムの部分に届くような形のブラシなど、道具があると効果的。
便器内部の清掃手順は、便器の中にたまっている水をグッとブラシで奥の方に押し込むと、水の部分がなくなって、掃除がしやすくなる。水を取るのにポンプを使う手もある。
そこに洗剤をかけて、泡立てて、少しおくと、汚れが溶ける。それで水を流しておしまい。
クエン酸と重曹の場合は泡が立たないので、便器に直接スプレーする。
洗剤類は清掃者が直接吸い込まないように注意する。
頑固な汚れには、トイレットペーパーを敷いて、洗剤を多めにかけて、少し時間を置いてから流す。
温水洗浄便座は表面がプラスチックなので、中性洗剤でふく。
マイクロファイバークロスを使う。トイレットペーパーの場合は十分に水で濡らせて使う。
便座のプラスチックのつなぎ目にも尿石が溜まっているので、尿石ジェルのようなものを付けて、少し時間をおいて、隙間を楊枝やくしで除去するとよい。
便座の裏のゴム(クッションゴムと呼ぶ)の部分にも尿の汚れが付いている。メーカーによっては、このクッションゴムを外すことができる。
これが黄ばんでいる場合は、塩素系の漂白剤あるいは酸性の洗剤をコップなどに入れて漬けると、汚れが薄くなる。
温水洗浄便座は、外れるものと外れないものがある。取扱説明書などで確認いただきたい。
トイレナビというホームページには、各社の取り扱い説明書のPDFがダウンロードできるサイトが紹介されている。
https://www.sanitary-net.com/clean/manual.html
温水洗浄便座の清掃作業はコンセントを抜いてから行う。
温水洗浄便座を外すと、下にプレートがある。ここの尿石を拭くときに、スプレーなどを吹いてしまうと本体の方に液体が入ってしまうので、拭く側のシートに洗剤を含ませる。
温水洗浄便座の細かい穴などは、綿棒を使うとよい。私は、ペットボトルの蓋を2個用意して、それぞれの中に、酸性洗剤と水を入れておき、ここに綿棒をつけて細かいところを掃除する。
温水洗浄便座の消臭に使うフィルターは綿ぼこりなどが付いているので、歯ブラシ等でこする。
温水洗浄便座のノズルは、リモコンにノズル掃除のボタンがあり、押すとノズルの棒が出てくる。
アルカリ性とクエン酸などの洗剤を上手に使って汚れを落とす。
温水洗浄便座の寿命は10年と言われている。掃除のときに便座がガタガタしないか?とか割れがないかとか、便座の暖房が偏っていないか、水が垂れていないかなどの点検をして欲しい。
トイレットペーパーホルダーやリモコン類には手の脂が付いている。
感染症の心配もあるので除菌もした方がよい。
トイレの床は、オシッコが跳ねている。中性洗剤で拭いても十分でないときは、クエン酸が効果がある。クエン酸には消臭効果もある。
床面と便器の隙間には、いらなくなったプラスチックのカードを布でくるんで隙間に入れて擦ると良い。
洗面台の水はねや石鹸よごれは、中性洗剤、クエン酸、重曹で汚れを落とすことができる。
金属の掃除はアルカリ性でも酸性でもできる。
洗面台の鏡の水はねは、クエン酸を溶いた水をまいて、食品ラップを貼ってしばらく放置した後、食品ラップ自体を丸めてこすると、スポンジと同じ役割を果たして掃除できる。
トイレの換気扇にはホコリが付いている。
便器や床の表面は、コーティング剤を塗って、よごれがつきにくくする方法がある。
洋式便器内部をきれいにする除菌水が噴霧される便座も誕生している。
男性が立ってオシッコする場合、便器の水面に泡が出て尿ハネを防ぐ製品がある。
メンテナンス研究会の会員は様々な技術を持っている。
例えば、小便器についた水垢を綺麗に取る技術を持っている会員や、床をコーティングする技術を持っている会員、頑固な尿石が付着した排水管をきれいにできる技術者もいる。

第4章 これからはトイレ掃除が社会を変える
新型コロナウイルス対策の除菌剤として、80%以上のエタノールと塩化ベンザルコニウムは効果が高く入手が簡単で安く、便座等の変色の心配がない。
除菌剤を、捨てても良い布や紙に含ませて、一方向にふく。
トイレでは、人が触れるところを中心に拭く。ドアノブ、石鹸のポンプの部分、便座、便蓋、リモコン、手すり、紙ホルダーなど。
新型コロナウイルスに関しては排泄物が原因という確認はされていない。
ただし、ノロウイルスは排泄物が原因で広がるので、しっかり対策をしていただきたい。

第2部:トイレ診断士の世界(講師:山戸伸孝氏)
私ども株式会社アメニティは、トイレメンテナンスの専門のフランチャイズ本部をやっている。
本部は横浜で、加盟店は、北は北海道から南は沖縄まで、全国約60ヶ所と韓国にも2社ある。
「THE TOKYO TOILET」プロジェクトでは、日本財団から依頼を受けてトイレ診断をやっている。私どもの仕事は、三つの柱からできている。
●リフレッシュメンテナンスは、機能・美観復帰サービスのこと。
今ある設備の機能や美観を復帰させるサービス。
●二つ目の柱はリニューアルサポート。設備改善支援のこと。
設備を新しく改善し、トイレの快適さを向上させるサービス。
●三つ目の柱は、私どもの仕事の本当の主業務であるリピートメンテナンスサービス。
1ヶ月に一度、繰り返し行うメンテナンスで快適さを維持するためのサービス。トイレ診断士が、1ヶ月に一度、小便器の尿石の固着を予防するための防止剤を交換したり、臭いを抑える消臭剤や便座除菌クリーナーなどを交換しながら、匂いのない快適なトイレ空間をつくる。単に薬剤の交換だけではなくて、人間の手によるメンテナンスを合わせて、快適なトイレを作っていく。
この三つのサービスに加え、仕事の核に育ちつつあるのがトイレ診断業務。
これは、トイレ診断士が行うトイレの健康診断みたいなもの。
トイレ診断は主観ではなく、客観的な事実をもとに診断を行っている。
例えば、トイレの換気回数が一時間に5.4回であるとか、小便器より3ppmのアンモニアが発生しているとか、男子トイレの臭気濃度は240だとか、トイレの照度が30ルクスで少し暗いとか、ベビーベッドから大腸菌が確認された、糞便汚染されているというようなこと。
トイレ診断がお客様から支持を受けている理由は3つあると思っている。
一つ目は、わかりやすいということ。人間の健康診断でも、熱っぽいと言われるよりも、体温が40度あったと言われた方が、問題の深刻さがよくわかる。
二つ目は、本当の問題が見えること。病院で、胸に聴診器を当てられて「風邪ですね」と言われるよりも、レントゲンで見たら肺に少し炎症がありますね、原因は細菌によるものです、これが治れば熱も下がりますので抗生物質を出しますと言われた方が、安心できる。
三つ目は、誰がやっても同じ数字になるので、基準が作りやすいということ。体温計を使えば、誰がやっても同じように体温を測れるので、一つの尺度による基準が作りやすい。トイレの数が非常に多いところで、ある一定の基準求められて、このトイレ診断が導入されたことがある。
トイレ診断を行うトイレ診断士は、私ども株式会社アメニティおよび加盟店によるアメニティネットワークの社内限定資格。1級と2級があって、厚生労働省から認定を受けている資格制度。
トイレルーム内の設備機器を総合的に診断し、顕在化、潜在化しているトラブルの発生源を見極める能力を持つ者に与えられる。
●換気能力の測定。
一時間に部屋の空気が何回入れ替わっているのかというのを風速計を使って実測する。通常は1時間に10回から15回、トイレの空気が入れ替わるのが適正と言われているが、実際に測ってみると全然動いてないことがよくある。
●ニオイの測定。
ニオイの数値化には、物質を測る方法と人の感じ方を測る方法がある。
物質を測る方法は成分濃度測定と呼ばれ、臭いの原因物質がどのくらいあるのかを調べている。臭いの成分が特定されている場合や、悪臭発生源を特定する場合にとても有効な診断方法。
アンモニアや硫化水素メチルメルカプタン、二酸化炭素などを測定する。一方、人間の鼻が嗅ぎ分けるニオイの種類は、40万種類あるので、物質を測る方法ですべてがわかるわけではない。
人間の嗅覚を用いて数値化する方法は、嗅覚測定法という。
悪臭は単一の物質できていることは稀で、たいていの場合は、複数のニオイ分子が混ざりあっている。例えば、タバコの煙は、約1000種類の化学物質から成り立っていると聞く。
その場合、国家資格者である臭気判定士による臭気判定が行われる。
測定方法は、日本の悪臭防止法という法律に規定されている。
ちなみに私はトイレ診断士であるとともに臭気判定士でもある。
●内視鏡。
これは人間の内視鏡と一緒。小便器や大便器の排水管に内視鏡を入れて調べる。
この他に、照度計を使ったり、最近はコロナに対応してATP拭き取り検査というのをやっている。
この検査で出てくる数値をよごれの指標として、1から2000は合格、2001から4000は注意、4000以上は不合格と定めている。
人間の手が触るところはすごく汚れる。ある例では、トイレの鍵は7358でアウト。洗浄ボタンはほどほど汚れている。ペーパーホルダーの紙切りの押さえる部分は8179。
あとは大腸菌がついていないかどうかのチェックをしたり、利用人数を確認したりしている。

【質疑】
Hoさん(質問):次亜塩素酸ナトリウムはトイレ清掃に有効と思うが、炭酸水素ナトリウムとの使い分けとか、利用上の注意点があるか。
栢森(カヤモリ):(白倉氏に代わって回答)次亜塩素酸ナトリウムは、カビの除去に有効。炭酸水素ナトリウムは重曹のことで、皮脂汚れを取るのには有効なので、便座の上などの皮脂汚れとか、操作パネルとか、トイレットペーパーホルダーとか、そういうところを拭くには適している。
Naさん:白倉さんの話で、ジェル状にするためにクエン酸と重曹に片栗を混ぜて作るということがあったが、クエン酸と重曹を混ぜたら、酸とアルカリなので中和されて中性になってしまわないか。
栢森:全部を一緒ということではなく、クエン酸と重曹それぞれに片栗粉を混ぜるということ。
たとえ混ぜても平気だけど、混ぜると結構発泡する。
それぞれに片栗粉を混ぜるということについて、片栗粉はでんぷんの一種で、通常は、温度を60℃以上に高めると結晶構造が崩れて、分子が大きくなって粘度が上がる。
Okさん(質問):公共トイレで、便器が詰まっていることがある。詰まらないようにするには、紙の使用の上限はどのくらいか。
川内:すごく抽象的だが、常識の範囲内でとしか言えない。
匿名(質問):便座除菌クリーナーは、トイレットペーパーに吹きかけて使うが、あれでは傷はつかないのだろうか。
山戸:文字が書けるような紙を使うと傷つくと思うが、そういう紙でない限りそんなに傷つきはしない。紙を多少濡らした方がいいが、そんなにすごく神経質になる必要はないと思う。
Hoさん(質問):臭気判定士には、生活上の制限があるのか。
山戸:臭気判定士は、5種類の基準臭を正確に嗅ぎ分けることができる方が合格できる。基本的に正常な嗅覚を持っていたら、誰でもできる。お酒を飲んでもいいし、生活上の制限はない。
川内(質問):尿石は薬品で落とすのか。それとも、まずはへらみたいなもので落として最後に薬品で仕上げるということか。
山戸:尿石は炭酸カルシウムやシュウ酸カルシウムなので、ほぼ骨みたいなもの。私たちは、塩酸濃度24%の強塩酸を使って配管の中の尿石を柔らかくする。その後に、フレックスシャフトという金属がぐるぐる回る機械を使って、尿石をはがして、その後に高圧洗浄機で洗い流す。
川内(質問):トイレの配管は塩ビパイプだと思うが、薬品で、侵されたりすることはないのか。
山戸:塩ビが酸で侵されることはない。鉛の配管だと、多少腐食するので、その分は計算しながらやらないといけない。私たちは、内視鏡を入れながら塩酸の点滴装置を一緒に入れたり、フレックスシャフトを入れたり、高圧洗浄のホースを入れたりして、配管の状況を観察しながらはがす作業を進める。
Toさん(質問):ひどい汚れをはがそうとして便器を傷つけたが、コーティングは素人でもできるか。
白倉:インターネットでコーティングを調べると、安いものがあるが、結構はがれやすいと聞いたことがある。私としてはプロの方にお任せした方が安心だと思う。メンテナンス研究会のメンバーは、家庭より公共用の仕事をしている方が多いが、家庭でもやってくれる方をご紹介できると思う。
Hoさん(質問):トイレでは、病院におけるカルテのように、メンテの記録を残しているのか。
山戸:作っている。トイレごとに、よごれの傾向とか、劣化の傾向があるので、きちんと記録にとって、保管している。
Hoさん(質問):その場合、どういう項目をやるのが大事か。
山戸:「THE TOKYO TOILET」では、そこのトイレがちゃんと使えているかという観点で見ている。石鹸容器が壊れていないかとか、そういう不具合やよごれの状況とかを毎月毎月チェックしている。
川内(質問):トイレ診断の結果として、清掃回数が足りないといった指摘も出てくるのか。
山戸:当然出てくる。それはトイレの使用頻度にも関係する。それらの結果として不具合が出ているのであれば、それは当然指摘する。
トイレごとに不具合の内容はまるっきり違う。使用頻度が高いところは清掃の頻度も高くないといけない。利用頻度が少ないところは、そんなに清掃活動を増やさなくても良い。それから、使う人の使い方というのもかなり影響している。