第16回「うんと知りたいトイレの話」報告 「補助犬トイレってなに?」 ~障害のある人を助ける補助犬はトイレをどうしているのか~

一般社団法人 日本トイレ協会、連続セミナー「うんと知りたいトイレの話」
第16回 「補助犬トイレってなに?」~障害のある人を助ける補助犬はトイレをどうしているのか~(2022年8月18日)
●講師:橋爪智子氏 特定非営利活動法人日本補助犬情報センター専務理事兼事務局長

(橋爪)身体障害者補助犬法ができて20年。私もこの補助犬の業務に携わって20年になる。
1年前に東京でパラリンピックが開催されたとき、ワシントンポストから取材を受けた。障害者のイメージはパラリンピックを通して変わったのかとか、日本がいかに障害者の権利を支えられるかという点でレガシーは残せたのか、と聞かれた。
私はすごく驚いた。今までいろいろな国内メディアから取材を受けたが、補助犬について利口なワンちゃんの奇跡の物語みたいな扱いを受けることが多かった。私は、これがまさに海外と日本の違いなんだと思った。
東京パラリンピックでは、イスラエルから盲導犬3頭、カナダから盲導犬1頭、この4頭だけだったが、快適に過ごして帰って行ったと思う。

【補助犬について】
現在日本で活動している補助犬(Assistance Dog)の実働数は969頭。
盲導犬(Guide Dog)は848頭で一番多い。盲導犬は70年の歴史がある。肢体不自由がある方のサポートをする介助犬(Service Dog)は58頭。聴覚に障害のある方をサポートする聴導犬(Hearing Dog)は63頭。
介助犬と聴導犬は20年前、補助犬法ができたことによって初めて認められた犬なので、まだ歴史としては20年。
盲導犬が視覚に障害のある方をサポートする場合、教えるのは曲がり角、段差、障害物の三つだけ。
盲導犬は胴輪(ハーネス)をつけていて、視覚障害者のある方はハーネスを介して情報を得る。
左に曲がれる角に止まるときは、左に体を少し入れて止まってくれるので、ここは左に曲がれる角だなということが伝わる。
段差の場合、上りの段差では前足をかけて止まるので、上りの段差だとわかる。
下りの段差は、段差を降りずに手前で止まってユーザーが確認をして降りる。障害物があるとそれをよけて歩いてくれる。
これが盲導犬の仕事。ナビの機能はない。
視覚障害のある人は頭にメンタルマップを描いていて、それに盲導犬から受け取る情報を組み合わせて犬に指示を出す。自分が思い描く地図が頭の中にある場所では、盲導犬もしくは白杖を使ってある程度安全に歩くことができる。
初めて行く場所とか迷った場合などは、地図がわからないので、盲導犬がいても歩く方向がわからない。周りの人のサポートが必要になる。
もう一つ、誤解されがちなのが信号の色。犬は人間のようにカラフルには見えないので、信号の色を判断してはくれない。ユーザーが車の流れや周りの人の動きから判断をして、盲導犬に指示を出して進む。
盲導犬は、盲導犬という表示のある白か黄色のハーネスをつけている。
ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーなどの大型犬が多い。
介助犬は、肢体不自由者、手足に障害のある方をサポートする。
介助犬は落とし物を拾って渡す、指示したものを持ってくる、脱衣の介助、ドアの開閉、スイッチ操作、車いすを引っ張るなど、1人1人の身体の状況に合わせて仕事をする。車いすを引っ張るというのは、車いすの足元にバンダナを巻きつけてあり、そのバンダナを引っ張る。1人では乗り越えられない段差やスロープを、自身の力と犬の力と合わせて乗り越える。
つえ歩行者の介助犬は、海外ではバランスドックと言われていて、杖と、介助犬が動く手すりのような状況で一緒に歩いてくれる。その場合は背中に持つところのついた胴輪をつけている。
介助犬は肢体不自由者の日常生活動作をサポートするが、一人一人の障害は本当に千差万別なので、その障害に合わせてほぼテーラーメイドの訓練を行う。
介助犬は、「介助犬」と書いたケープやマントを身に着けている。
ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーなどの大型犬が多い。
聴導犬は聴覚障害者に必要な音を教え、音源に誘導する。
スマホの着信音、FAX、家電の音、目覚まし時計、赤ちゃんの泣き声など。
外出中は、後ろから来る車や自転車の音など。ベルを鳴らされる前に気配の音で教えてくれたりする。
火災報知器、非常ベルなどの緊急事態は伏せて教えてくれる。
音を教えて音源へ誘導するという作業だが、それ以上に、音がない時間も安心をくれる。
聴覚に障害のある方は、いつ音が鳴るのか、今、自分が危険な状態にあるかどうかを知ることができないという不安を抱えている。その安心感をもたらしてくれるというのは、聴導犬の非常に大きな役割。
いろんな犬種がいる。聴導犬は、音を教えるという作業なので、大きなラブラドールもいるし、小さなトイプードルも聴導犬として活動をしている。
聴導犬はケープやマントを着けて、そこに聴導犬という表示をつけている。
聴導犬のもう一つの大きな役割として、この聴導犬という表示をつけていることで、この人には聴覚障害があるということを周りに知らせている。聴覚障害は外見ではわからないので気づかれないことが多いが、聴導犬が一緒にいることで、必要なサポートを受けるための目印にもなってくれている。

町で出会って、ちょっと困った様子のときは、ユーザーに「どうされましたか?」「何かお手伝いしましょうか」と声をかけてほしい。犬に対しては、見つめたり、声をかけたり、急に触ったりはしないでいただきたい。集中が切れてしまうといけないので、基本的に社会で会う補助犬たちには、仕事中は声をかけない、触らない、気をひかない、とお願いをしている。

身体障害者補助犬法という法律が、20年前に成立した。この補助犬法の目的は二つある。
(1)身体障害者の自立と社会参加の促進に寄与すること。
これは犬の法律ではない。不特定多数の人が利用する施設で、障害のある人が補助犬同伴で利用するのを受け入れることを義務付ける法律。社会に受け入れだけを求めているわけではなく、補助犬を同伴する身体障害者は、補助犬の行動管理、衛生管理、周囲に補助犬であるということがわかる表示の掲示が義務付けられている。
(2)良質な身体障害者補助犬の育成
訓練事業者たちに、マナーを守れる補助犬と、そしてユーザーの教育をしっかりするということを義務付けている。
20年前、身体障害者補助犬法ができた当時は、障害がある方のアクセス権を、日本で初めて認めた画期的な法律だった。
障害者差別解消法のガイドラインの中でも、不当な差別的取り扱いの事例として、補助犬の同伴受け入れの拒否、ということが書かれている。全国のユーザーに調査すると、補助犬の同伴を拒否されたことがあるという人は2015年に66%。実は最近の調査でもほぼ変わらず、7割近い方が補助犬同伴の拒否に遭っている。
1人でも多くの方に、これは障害者の社会参加の問題なのだと正しく知っていただきたい。

【補助犬トイレについて】
まず、補助犬トイレは誰のためか、というところを見失ってはいけないと思う。
補助犬トイレについての設計基準、スペック、形状などの決まりはない。
また、ユーザーからの評価も、良かったり悪かったりいろいろ。
ユーザーからの要望としては、計画時点からユーザーを入れてほしい。
補助犬に指示を出して、犬の行動管理をしているのは全部補助犬ユーザーだから、補助犬ユーザー自身が利用しやすいかどうかというのが非常に重要になる。そして、補助犬にとって快適かどうか。
その犬がどういう訓練を受けてきたかによって排泄の仕方がいろいろある。そして、持って生まれた性格というのもある。
なので、一つの方法で全ての補助犬が使えるわけではない。

【補助犬の排泄方法】
(ビデオ紹介)
補助犬は決まった時間に排泄をするように訓練されており、指示なしでいきなり排泄することはない。通常は周囲の環境に影響を与えないアスファルトの上や植込み。身体障害者用トイレなど屋内の場合はペットシーツを敷いて、その上で排泄を行い、使用者自身が排泄物の処理を行う。
最近は外出時に補助犬使用者自身が、排泄物を簡単に処理できるワンツーベルトなどの道具を使うことも多い。
この結果、排泄のトラブルはより少なくなったといえる。
ビデオに最初に出てきた介助犬ユーザーは、脊髄損傷で上肢が使えるので、床にペットシーツを置いて、片付けもできていた。
次の盲導犬ユーザーは、植え込みの横の、排水溝があるアスファルトの床だった。犬はユーザーからのワンツーワンツーというかけ声で排泄していいのだと理解して、この犬の癖として、ユーザーの周りをぐるぐる回っていた。
ユーザーの周りを犬がぐるぐる回ると結構な面積が必要になるが、この広さは犬によっていろいろ。
某ホテルの補助犬トイレは、屋根付きの屋外で、床は人工芝。
排泄物を入れた袋とか、使ったペットシーツを捨てられるように、ゴミ箱が設置されている。
一段上がった台があって、介助犬が上に乗って排泄をする。ただ、向きを変えたりするのには少し狭い。
犬が台の上で排泄してくれると、車いす使用者は処理がとても楽になる。
肢体不自由の方は専門家と一緒に、自助具とか道具を開発して、使っている場合が多い。
たとえば、ワンツーベルトと言われる道具は、犬のウエストにベルトを巻いて、そこにビニール袋を付けて排泄物が中に落ちるようになっている。また別の方は、リーチャーのようなものを使っていて、それで犬の排泄物をキャッチしている。
犬は訓練を受けているので、この排泄のやり方に慣れている。ただこのやり方が合わなくて、ストレスになる犬には無理にはさせない。その犬がストレスなくできる作業をきちんと訓練するということが、犬の福祉を守るという点で大事になっている。

【さいたま新都心駅の事例】
さいたま新都心駅に、すごく立派な補助犬トイレができている。
ただ、盲導犬ユーザーからは、計画のプロセスで声を聞いてもらえなかったという声があり、鉄道事業者と話し合う機会を設けてもらった。私達は犬の訓練はしていない情報機関で、いろんな方からの相談を受ける役割をしており、ちょうどユーザーと鉄道事業者の間の中立の立場として話し合いに参加した。
この補助犬トイレは透明なガラス張りになっていて、中で使っている様子が見えるようになっている。
ドアは自動ドア。ドアの横の壁にトイレ案内図が掲示してあって、視覚障害の方にわかるように触地図になっている。
ここに来るまでの音声案内がなかったので、視覚障害のある人がここにたどり着くのは難しいという意見があった。
盲導犬ユーザーから、トイレの中に音声案内を流して欲しいという要望が出て、去年つけていただいた。
ここの補助犬トイレには、先ほど紹介したホテルにあったものと同じように、一段高くなった排泄台が設置してある。
排泄台の床はステンレスになっている。先ほどのホテルの台は木製で、しかも人工芝が敷いてあった。
ステンレス製の床は衛生管理とか清掃の面からすると、すごくいいとは思うが、犬によっては排泄できない場合がある。
そもそもこの台は、盲導犬ユーザーにとっては邪魔になる場合がある。
先ほどのホテルの例も、台があって素晴らしいという方と、あの台に荷物を置いてしまい、床が濡れていてすごく汚れてしまったという方もいるので、台があれば一番いいとも言えない。
最近、空港などの室内に作られる補助犬トイレには、ステンレス製の台が置かれていることが多い気がする。実際に試してみると、犬は排泄しなかった。そもそも犬が乗りたがらないということも多いので、床材も検討しなければならない。

【社員教育の重要性】
日本で一番高いタワーであるスカイツリーには、その下にタウンソラマチというショッピングモールがある。私たちの会はそのスカイツリータウン全体の施設のユニバーサルデザインのアドバイザーとして、いろいろな相談を受けている。
10年前にスカイツリータウンがオープンしたときに、補助犬トイレを設置してもらったが、わざわざ何かの施設を作ったのではなく、植え込みの場所を補助犬トイレと決めた。別に何にもない。ただ植え込みがあって、排水溝が近くにある。
補助犬トイレとか犬のトイレと掲示すると、ペットがいっぱい使うのではないかというスカイツリータウンからの懸念があったので、看板はわざわざ出していない。
スカイツリータウンの社員教育の際には、特別な施設が必要だとは言っていない。例えば補助犬ユーザーから補助犬が排泄できる場所を聞かれたら、まずはどのような場所をお探しですかと聞き、車いす用のトイレも、広くて補助犬ユーザーが使えるということを知っておいて、状況に応じて補助犬トイレとして案内できるようにしよう、と伝えている。
重要なのは、社員教育だと思う。そして、ユーザーからの希望に応じた案内ができるようになることが大事だと思っている。

【まとめ】
補助犬トイレには、スペックとか形状とか何か決まったものはない。補助犬業界全体として、ユーザーや犬たちの声を聞きながら、どういうものがいいかをきちんと考えていく必要があると思っている。
私が思う必要な要素として、屋外の場合は屋根が欲しい。
屋外でしか排泄しない補助犬もいるので、雨天のときの屋根が欲しい。
屋外と、屋内の例えば多機能トイレの両方が使えるという準備がしてあるとありがたい。
排泄物が地面に落ちても簡単に流せるので、駐車場の隅っこを使わせてもらってもいい。
床の材質としては、ユーザーである障害のある方々が利用しやすい床材かどうか。車いすを操作しやすいかということも大切。また、犬が使いやすいかも考える必要がある。
補助犬と補助犬ユーザーはマナーを守る。ただ障害の状況によっては、取り切れなかったとか、気づかずにちょっと残ってしまうということはあるかもしれない。その場合に、衛生管理の観点からも、掃除がしやすい床材であるとよい。
それから目隠し。排泄のときに、人前ではできないという犬もいるので、目隠しがあると嬉しいなと思う。
最後に、補助犬トイレを利用するのは誰かをもう一度考えていただきたいと思う。
補助犬ユーザーは、視覚障害、肢体不自由、聴覚障害がある。全ての人が使いやすいというのはなかなか難しいと思うので、この場所を使っていいよとちゃんと受け入れてくれているという気持ちが一番大事だと思っている。
補助犬にとって快適かどうかは、様々な訓練によって違いがある。持って生まれた性格もある。
全ての犬が快適だということが、すごく難しいのも理解している。
最後に補助犬トイレは必要なのかという、ちょっと究極の問いを投げてみる。
建設関係の設計士とか、いろんな会社からの問い合わせでは、代表的な設計図があるかとか、どういうものが一番いいかと聞かれるが、どういうものがいいとはなかなか言えないということを伝えて、トイレの話の前に、そもそもその施設について、視覚障害者が使いやすいか、肢体不自由の方が安心して利用できるか、聴覚に障害のある方も困らない、不安じゃないか、まずそこを考えてほしいとお願いをする。それをクリアした上で、さらに補助犬トイレを作っていただくのであれば、そんなに仰々しいものでなくても大丈夫だということを、必ず伝えるようにしている。
補助犬のペアが当たり前に活躍できる社会というのは、全ての人が活躍できる社会だと思っている。
補助犬ユーザーたちのアイディアや知見から学ぶべきことが多々あると、私はこの20年で本当に感じている。
補助犬ユーザーがいつも安心して笑顔でいられるような社会を目指していきたいなと思っている。
美味しいもの食べに行きたいとか、おしゃれをしたいとか、働きたい、旅行したい、学びたいっていう気持ちは障害があるとかないとかに関わらず、当然の権利だと思う。この当たり前を実現するために、補助犬というパートナーを選んで社会参加をしている人たちがいるということを、皆さんに知っておいていただけたら、もっと素敵な社会になるのではないかと思う。
私たちの会では、様々な発信をSNSや Webサイトで行っているので、ぜひご覧いただきたい。(https://www.jsdrc.jp/)

<休憩>
(川内)5つの疑問がある。1つ目の疑問は、補助犬の排泄は、地面に直接する場合と、ユーザーが支度したシートやワンツーベルトに取り付けたビニール袋の中に排泄する場合がある。例えば地面に排泄する場合の後始末について、設計上どういう想定をしているのだろうか。
2つ目の疑問は、床は人工芝が多いが、果たして人工芝でいいのだろうか。犬は多分、これは芝だと認識していない。
3つ目の疑問は、目隠しの塀について。犬にとっては周りが見えない方がいいのか、あるいは見えていた方がいいのか。
4つ目の疑問は、水栓は、シャワーのように水が広がるような吐水口がいいのか。水栓になぜ温度調節が付いているのか。掃除用なら湯は必要ないのではないか。
疑問の5つ目は、このトイレが補助犬専用となっている点。盲導犬、介助犬、聴導犬をまとめて補助犬と呼ぶのは日本の定義。海外では、日本の補助犬以外で、障害のある人の生活をサポートする犬がいろいろいる。海外から障害のある方の生活を支えている犬が来たときに、果たしてこの補助犬専用のトイレを使っていいのか。

【質疑】
(橋爪)先ほどの川内さんからの質問について答える。
まず排泄は床面に直接排泄するのか、について。補助犬は、ほとんどが汚さないマナーを守れるような訓練を受けている。
中には、屋外でしか排泄しないという犬もいるが、基本的にはパートナーである障害のある人の生活スタイルに合わせた訓練を受けた補助犬がペアになっているので、ほとんどは室内でもできるように、そして床を汚さないように排泄できる。
盲導犬だったら袋の中に排泄させて片付ける。介助犬や聴導犬はペットシーツの上で排泄できるので、基本的に床を汚すことはないということを知っていただけたら、もっと設計が変わってくると思う。
(APさん)排泄物をどうやって持ち帰っているのか。
(橋爪)基本的にゴミ箱があればありがたい。ゴミ箱がない場合もあるので、各自が汚さずに持ち帰るような工夫をしている。たとえば盲導犬の場合は、袋の中に凝固剤を入れて尿を固めて、燃えるゴミとして持ち帰ったり、ゴミ箱に捨てたりする。
便の場合は、袋をギュッと縛る。次に消臭効果の高いビニール袋に入れて、またギュッと縛る。さらに、強固に臭いを防ぐために、これが一番良いと皆さんおっしゃるのは、湿布薬が入っていたパッケージ。
川内さんからの2つ目の疑問について。
人工芝の床は、犬が小さい頃からの訓練の中で慣れていて、嫌がらずに使っている犬が多いと思う。
補助犬ユーザーもベランダに人工芝を敷いて、そこを排泄場所として覚えさせているという場合もある。
3つ目の疑問の犬の目隠しについて。
人間がウロウロして目が合うと、すごく恥ずかしいという表情をする犬もいるので、目隠しは有ると嬉しい。
4つ目の疑問のシャワーと温度調節付きは、私もわからない。
清掃するという意味では、人間用のシャワーヘッドのように水が広がるものでなくていいと思う。
5つ目の疑問について。
補助犬法は日本の国内法なので、国内で認定を受けた補助犬ユーザーと補助犬のペアが、合格書をもらって認定証を携行することで初めて社会参加できるものなので、海外のユーザーには該当しない。
海外から来たアシスタンスドッグは日本の補助犬法上の補助犬には当たらない。そのため、公共交通機関のアクセス権や店舗へのアクセス権はないというのが、今の補助犬法の課題。
厚生労働省は暫定の期間限定証明書を発行できる仕組みを作っており、その情報を海外のユーザー向けに出している。ただ、その仕組みにたどり着けなかった方がどのぐらいいるかというのは、今後しっかりウォッチしていかないといけない。
(川内)海外では精神障害のある方々が犬を連れていたりするが、それは日本の補助犬のカテゴリーに当てはまらない。厚労省の一時的な証明書は、日本の補助犬のカテゴリーに当てはまらないものには発行しないだろうという気がする。
(橋爪)海外、例えばアメリカだったらば、PTSDとか精神疾患障害をサポートする犬などもたくさんいる。
たまに当会にも海外から問い合わせがあって、そのときには、厚労省の補助犬法の英語サイトをご紹介して、残念ながら日本では、この3種類しか認められていないので、もし来られるとしたらペット扱いになるということは伝えている。
補助犬法上のアクセス権はないということになる。
(匿名)補助犬は、例えば長時間飛行機に乗るとか、列車に乗る場合に、排泄時間を調整できるのか。
(橋爪)時間にもよるが、極力我慢はさせない。飲む水の量をコントロールすることはあるとも聞くが、最近は飛行機でも車いすで使える広めのトイレがあったり、機内の廊下に目隠しをしてもらって、トイレのドアを開けてその前のスペースで排泄をさせたということも聞いている。どのぐらいの時間で、どういうところまでの行動が可能なのかというのは、ユーザーが調整していると思う。命ある生きものなので、調整していても、突然、もよおすということもあるかもしれないが、その時にはちゃんと処理はできるような工夫がされている。
(川内)車椅子を使う方々も、飛行機のトイレが狭いので、トイレのドアを開けっぱなしにして、通路に目隠しのカーテンを係員が手で押さえておいて、それで排泄せざるを得ない場合がある。
(Naさん)人間のように水洗トイレは使えないのか。
(橋爪)洋式トイレで排泄する猫は見たことがあるが、犬についてはまだ知らない。
(Hoさん)聴導犬の訓練はどのようにするのか。
(橋爪)聴導犬の訓練をしている専門の事業者があり、そこで専用の訓練を受ける。聴覚に障害がある方に教えるべき音、必要な音を鳴らして、それを教えに来ると褒めるという形で、犬が自分で考えて、この音を教えれば褒められるぞというモチベーションをどんどん高めていく。なので、聴導犬は尻尾を振りながらお仕事をしてくれる。
(匿名)介助犬は排泄の時間が決まっているので、時間が近づいたらワンツーベルトを準備すればいいのか。
(橋爪)基本的に飼い主が排泄のタイミングをちゃんと管理していて、ここで排泄してもいいよと言わない限りは排泄しない。
我慢しすぎないので、基本的に排泄のミスはない。ただ体調によって、今日はいつもよりも近いなとか、ちょっとそわそわしているなといった様子を見たり、今から映画館に入るから、もう1回促してみようとか、そんな感じでコントロールしている。犬の個体によって回数もまちまちで、すごく間隔が短い犬もいれば長い犬もいる。
介助犬の歩き方が遅くなるとか、盲導犬が見上げてくるとか、その犬によってそれぞれだが、おしっこの命令を出してくれと催促してくる。盲導犬が見上げるのは、ユーザーは目では確認出来ないが、犬の角度が変わるのでわかると言っていた。
(Teさん)補助犬トイレがないときは植え込みを探したり、自宅に帰るまで待たせたり、自宅に早く帰れるように外出時間をあらかじめ短く見積もって出かけるといった工夫をされているのか。
(橋爪)補助犬トイレがどんどん増えるのはありがたいが、そうなってくると補助犬トイレがあるのだからそこで排泄させろと言われてしまうと、探すのが大変になる。植え込みを探したり、駐車場の隅などで迷惑がかからないような場所を探すが、都市部でどうしても見つけられないときは、頑張って帰るか、とにかく、どこかを探して排泄させるという形になる。
(Teさん)補助犬ユーザーにとって補助犬トイレはどこにあるといいのか。
(橋爪)そのユーザーの生活スタイルや行動範囲による。お金をかけて立派なものを作るよりも、この施設の中だったら駐車場のこの隅っこの場所がいいとか、多機能トイレを使ってくださいとか、アナウンスをいただけるとありがたい。
(川内)補助犬はまだ日本の社会でなじみがないので、どんな設備やスペックが必要なのかというのがまだよくわからない。
それから犬がくるくる回るにしてもどれくらいのスペースがあればいいのかわかっていない。みんな、前の例に倣って造っているのではないか。だから、シャワーのように、温度調節などは要りそうにないのに、付けられたりしているのだと思う。
さっき橋爪さんがおっしゃったとても重要な点は、そこを障害のある方が使えるということ。
例えば、視覚障害のある方が使えるように点字なり、触知できる表示がきちんとできている。聴覚障害のある人が使えるように、非常ボタンを押したときに相手の反応が目で見てわかるように表示される。こういうふうな、障害のある方がまずきちんと使える環境、そして犬の気持ちを尊重するような環境をつくるというのがスタートなのかなと思う。
(橋爪)例えば、呼び出しボタンが立位の方に合わせていて座位からは使いにくいとか、ゴミ箱の投入口も高いとか。
足踏みペダルは、脚が使えない方には使えない。
基本的に、車いすで使える多機能トイレは、視覚障害のある方は使わないので多機能トイレに慣れていない。
しかしスペースを考えると、盲導犬は多機能トイレとか補助犬トイレを使う。だから、音声や視覚による情報提供なども含めて、いろいろな障害のある人への配慮を考えていただけると、すごくインクルーシブでユニバーサルな施設になると思う。
(Muさん)補助犬トイレについてユーザーから困りごとや苦情があるか。
(橋爪)やはり物理的な面、狭くて使えないとか、床がツルツルして犬が嫌がるというような声はある。
一番残念だと思うのは、多機能トイレで補助犬に排泄させて出てきたとき、車いす使用者など多機能トイレを優先的に使いたい方々から「犬のトイレに使うなよ」といった心無い言葉をかけられたり、怪訝な顔をされることがあること。
補助犬も多機能トイレを使うということがまだまだ理解されていないために、補助犬ユーザーが遠慮している場合もあるので、仲間に入れていただけたら嬉しい。
(Hoさん)補助犬法には精神障害の方への補助犬が含まれていないのはなぜか。
(橋爪)アメリカは、ADA(Americans with Disabilities Act)で全ての権利が認められているので、Assistance Dogという中にもいろんなサポートをする犬がいる。犬だけではなく、いろんなサービスアニマルもいる。
日本で補助犬法を作るときは、補助犬を理解してもらうという面で非常に難しい部分があった。日本には福祉制度として身体障害者手帳があり、そこでは視覚障害、聴覚障害、肢体不自由をカバーしているので、その3障害からスタートしようということになった。
補助犬3種が当たり前になって、もっと発展していければいいが、まだ他の犬まで広げられていないというのが現状。
(Kaさん)補助犬トイレの普及には、ペットも使えるようにしたほうが進むと思う。ただ、補助犬と違ってペットの場合はマナーが守られないので結構大変なのかなという気がする。
(橋爪)補助犬の普及が進まない原因の一つとして、ペットの飼い主のマナーの悪さがある。
ちゃんとトレーニングできているペットと補助犬は補助犬トイレを使っていいと区切れるといいのだが。
ドッグランでは、予防接種の証明があって、きちんとトレーニングできている犬だけ入れるというルールのところもある。