JTAトイレ賞受賞作品から Part2
司会・講師
- <講師1>「トイレ NIE 活動」 猪野迫天翔、佐藤夢駿、安東慎一郎(日本文理大学付属高校)
- <講師2>「IoT によるトイレ維持管理の効率化~スマート SA マネジメントシステム~」 嶋浦早紀(中日本高速道路株式会社)
- <講師3>「SDGs 時代のライフサイクル延長への挑戦(駅トイレ) ~トイレコーティング~」 吉丸猛、中山勝、有泉勝也(株式会社小田急ビルサービス)
- <司会>山本浩司 日本トイレ協会理事/中日本高速道路株式会社
講演概要
(司会:山本)
本日は、2023年度のJTAトイレ賞で受賞された3作品の方にご講演頂きます。
一つ目は、日本文理大学附属高校の猪野迫さん、佐藤さん、安東先生から「Newspaper in Education」ということで、トイレに新聞記事を掲示して、生徒の皆さんに新聞を読んでいただく機会を設けた活動です。
二つ目は、中日本高速道路(株)の嶋浦さんから、IoT技術を活用した次世代のトイレ維持管理手法の取組内容についてご紹介いただきます。
三つ目は、(株)小田急ビルサービスの吉丸さん、中山さん、有泉さんから、SDGsに対する取り組みの社会要請が高まっている中、機器のライフサイクルの延長へ挑戦した取り組みについてご紹介いただきたいと思います。
その前にまずは、JTAトイレ賞の説明を、日本トイレ協会の浅井さんからお願いします。
(浅井)
JTAトイレ賞は、「みんながいつでもどこでも気持ちよく使えるトイレ環境を作り、それを持続できる社会をつくることを目標に顕著な活動の実践や提案を行っている方を表彰する」ものです。
トイレの環境作りの模範になる作品を推奨するために行っています。
このJTAトイレ賞は歴史のある賞で、トイレ協会が発足した1985年に始めた「グッドトイレ10賞」から引き継がれています。その後2009年に「グッドトイレ選奨」という形で再出発しました。当初は公共トイレの改善をトイレの形、建物そのものを見ていただくということで始めましたが、徐々にメンテナンスなどソフト的なこと、様々な社会活動も増えてきて、2021年から4部門に分けることにしました。また、2024年からは名称を「JTAトイレ賞」に変更しました。
名称や部門を変化させながら、1985年から続けている活動です。
JTAトイレ賞に応募いただくことで、トイレに関わる専門家である審査員からの評価を得ることができます。また、受賞された作品は、新聞や専門誌で紹介されることもあります。
実際の応募ではたった1枚の資料でしか説明できないので、このように「うんと知りたいトイレの話」でじっくりお話をしていただきたいと思います。
講演1:トイレ NIE 活動
猪野迫天翔、佐藤夢駿、安東慎一郎(日本文理大学付属高校)
(山本)
1つ目の日本文理大学付属高校の皆さんからお話をしていただきます。社会的活動部門で「ユーモア賞」を受賞されました。
川内美彦審査員からの講評です。
「説明資料の写真が秀逸です。⼩便器では隣の人のことがしばしば気になります。しかしこの写真では、並んだ男子学生が、隣の人のことを気にすることもなく、一心不乱に眼前の新聞を読んでいます。おそらく、排せつによってすっきりした頭の中に、ズンズン吸収されると思います。私も若い頃、トイレのたびに一生懸命新聞を読むことができていたならば、今よりはもう少しマシな人間になれていたのではないかと思います。」
(佐藤)
私たちの日本文理大学附属高等学校は、大分県佐伯市にある私立高校で、生徒は500人ほどです。1学年6クラスで、様々な資格を取ったり、大学を目指したり、就職を目指したりするコースにわかれています。
トイレには姿見鏡が付いていて、自分の身だしなみをきちんと直すことができたり、ウォシュレットが付いていたり、女子トイレには擬音装置も付いています。
今回受賞した「トイレ NIE 活動」では、トイレに新聞記事を掲示し、新聞を読む機会を強制的に設けました。なぜこの活動をやろうと思ったかというと、普段使っているトイレで、少しでも社会の情報を頭に入れられたらいいかなと思い始めました。「ユーモア賞」を受賞したことは、テレビでも紹介されました。
(猪野迫)
「ユーモア賞」を受賞できて嬉しいです。今後もこの活動を続けていこうと思います。
<質疑応答>
(川内)
審査をした川内です。
排泄中に目の前に新聞記事があるというのは、自然と目に入ってくる非常に良いアイディアだなと思いました。これから活動を続けていきたいというお話でしたけれども、今後ぜひお願いしたいのは、読んでいる学生さんたちがどういうふうに思っているか、新聞記事が役に立つのかということ。すぐに役に立つものではないと思いますが、社会の流れを知るには、とても良い道具だと思います。読んでいる学生さんたちがどういう気持ちで読んでいるのか、あるいは、それによって、トイレの時間というものの捉え方がどういうふうに変わっていったのかなどもぜひ調べていただければ、研究としてもなかなか面白いかなと思いました。
(猪野迫)
全校にアンケートをとって、何の役に立ったのか、見たい記事は何なのかなど、調査したいと思いました。
(細野)
70年ぐらい前、学生時代に私は新聞委員をやっていました。苦労したのは、新しい記事、面白い記事をどう選ぶのか。掲載する記事はどのように選んでいるのですか?
(佐藤)
高校生でも分かりやすそうな、興味を持ってもらえそうな記事を選びました。今は小便器の前にのみ掲示しているので、今後は大便器ブースにも掲示したいと思っています。
講演2:IoT によるトイレ維持管理の効率化~スマート SA マネジメントシステム~
嶋浦早紀(中日本高速道路株式会社)
(山本)
2つ目、中日本高速道路の嶋浦さんからお話をしていただきます。維持・管理・運営部門で「奨励賞」を受賞されました。
山戸伸孝審査員からの講評です。
「快適なトイレ環境の創造には、「きれいなトイレを目指そう」という意識も重要だが、何よりも重要なのは「客観的な事実に基づき、一つ一つの問題に対処すること」である。今回の取り組みは、多数のセンサが収集した利用状況をクラウドに保存し、清掃員や維持管理責任者がリアルタイムで問題を共有し、解決へと導くことができる優れたシステムである。今後、このようなシステムが広く普及されるよう、活用結果報告も楽しみにしたい。」
続いて、私、山本浩司審査委員からの講評です。
「ICT技術を活用した快適で最適化されたトイレ空間を目指す取り組みは、新規性、快適性、先進性の観点から評価に値する。現時点では、試行箇所も少なく、先行導入箇所の評価検証結果を踏まえたセンサ等の仕様、データ処理方法、表⽰画面の見直し等が残っているようであるが、トイレ空間のCS、ESの向上を目指し、今後とも、継続的な課題改善への取組みに努められることを期待する。」
(嶋浦)
スマートSAのマネジメントシステムは、トイレの設備にセンサを設置して、それを活用してトイレ内をIoT化することによって管理を適切化することを目指したものです。センサによってトイレ内の環境や利用状況を定量的に把握することで、トイレの清掃やトイレットペーパー、水石鹸の残量、補充をこれまで以上に適切な時期に、かつ効率よく行うことでお客様にとってさらに快適なトイレ空間を目指しています。センサからの情報は、クラウドで取りまとめ、清掃員や補修員が確認できるようになっています。
このシステムを作るにあたり、まずは清掃員(NEXCOではエリアキャストと呼んでいます)がどのようなものをデータ化、または自動化して欲しいと思っているかをヒアリングしました。そのヒアリングに基づき、トイレットペーパーや水石鹸の残量やトイレの利用状況をデータ化しました。
まずは、2022年度に東名高速道路の上り線、西湘PA下り線トイレにおいて、スマネジメントシステムを導入しました。エリアキャストにタブレットを渡して、トイレ内の状況を確認できるようにしています。ただ、エリアキャストは高齢の方も多いので、タブレットだけでなく、清掃用具を置いておく場所にタッチパネル式のモニターを設け、ここからも確認できるようにしました。
現在は、新たなシステムも開発しています。私たちはこちらのシステムを「不具合報告ツール」と呼んでいます。
今まではトイレの不具合があった場合、トイレ内に設置しているノート等にメモをしていました。そのメモの情報を、各事業所のグループ会社社員がExcel等のフォーマットに入力し、NEXCOの関係者に共有して補修を依頼していて、発見から補修までにかなりの時間を要していました。
今回開発した「不具合報告ツール」では、エリアキャストに渡しているタブレットから設備の不具合を速やかに関係者に報告することができ、発見から補修までの時間を短縮し、CS向上に繋げる仕組みになっています。
<質疑応答>
(細野)
エリアキャストには高齢の方も多いということですが、タブレットの画面配置などで配慮した点はありますか?
(嶋浦)
何か操作をしないと見られないというのではなく、画面をパッと見るだけで、水石鹸の残量が分かるというような、分かりやすさの工夫をしました。
講演3:SDGs 時代のライフサイクル延長への挑戦(駅トイレ) ~トイレコーティング~
吉丸猛、中山勝、有泉勝也(株式会社小田急ビルサービス)
(山本)
最後は、(株)小田急ビルサービスの吉丸さん、中山さん、有泉さんからお話をしていただきます。社会的活動部門で、奨励賞を受賞されました。
山本耕平審査員からの講評です。
「現存の便器に表面加工して使用年限を伸ばすことで、コストダウンを図るという提案である。多数の設備がある駅での有効性だけでなく、一般の建築物にも活用でき、社会的には廃棄物の削減やCO2削減にも資するものとして評価できる。「リユース便器」というような方向に展開できると面白いと感じた。」
続いて、中野和典審査員からの講評です。
「便器に表面加工を施すことにより便器を交換せずに使い続けること自体に新規性はないが、たくさんあるすべての駅のトイレで実施するとなると、その数は計り知れず、廃棄物を出さない効果、廃棄に伴う二酸化炭素の放出を防止する効果、コストダウンの効果は大きく、SDGsの啓蒙活動として社会へ問いかける意義は高く評価できる。」
(中山)
私たちは小田急線全線の清掃の担当をしています。大都市圏や観光地の駅のトイレは、他の公共トイレと比較しても、利用頻度が著しく、機器の劣化が進みやすいのが現状です。従前は、機器の取り替えで対応していましたが、廃棄材も極力出さない管理が望まれる中、機器のライフサイクルの延長に挑戦しました。具体的には、便器の陶器自体の強度には問題がないので、表面が劣化した便器に表面の加工で対応したという試みで、衛生陶器表面にガラスコーティングを施工しました。
陶器表面の具体的なリファイン方法は、まずは耐水ペーパー320番台をかけて、600番台で順次表面を擦り、1000番台で細かなすり傷をなくし、仕上げに3000番台のコンパウンドで磨いてツルツルの鏡面状態にします。陶器に付着した研磨剤を水で洗い流して、ドライヤーで表面を乾燥させた後に、ガラスコーティング剤を塗布して乾燥させます。
衛生陶器の交換では配管や床面への加工を伴う場合、夜間作業2日にかかるため、1日は部分停止、使用停止になり、お客様に迷惑をかけてしまいます。しかし、今回紹介したリファイン方法では、夜間作業1日で完了できるため、お客様に迷惑をかけることなく、廃材も低減することができます。さらに、施工費用も衛生陶器の交換に比べ、約10分の1に抑えることができました。
(有泉)
小田急グループでは、「環境表彰」というものをやっています。このイベントは、小田急グループ各社職場グループ、また個人の取り組みを表彰して、その内容を社内外に周知することで、環境活動の水平展開や従業員の意識向上、そして主体的な取り組みへの発展に繋げて、小田急グループの環境の取り組みを活性化することを目標に行っています。今年で2回目になります。この「環境表彰」に、この活動も応募しました。
その結果、小田急グループ内で20数点あった応募の中から、優秀賞を受賞することができました。JTAトイレ賞で奨励賞を頂き、小田急グループ内の「環境表彰」でも優秀賞を受賞することができました。「環境表彰」への応募に際しては、JTAトイレ賞での審査員からの講評もつけました。その結果、トイレの専門家からも高い評価を頂いたということで、優秀賞を受賞することができました。
<質疑応答>
(細野)
トイレコーティングの耐用年数はどれぐらいですか?
(中山)
2~3年ほどです。その期間を過ぎれば、再びヤスリがけしてコーティングをします。
(中森)
陶器はそれほど簡単には表面が劣化することはないのですが、何年ぐらい使った便器をコーティングされていますか?
(中山)
少なくとも30年は使った便器です。


