- 司会
- 高橋未樹子:日本トイレ協会理事/コマニー(株)研究開発本部研究開発課 課長
- 講師
- すべての人に愛されるトイレへ~成田国際空港トイレリニューアル~
株式会社空間デザイン 阿部弘明・岡本孝子・浜鍜久仁子(はまかくにこ) - 学校施設のトイレに求められる音環境の探索
岡山県立大学大学院 デザイン学研究科2年 矢口絵理奈 - トイレを清潔に保つための清掃依頼ボタンの導入評価
中日本高速道路株式会社 関谷有紗加(せきやあさか) - 認知症になってもやさしいスーパー・プロジェクト認知症の方に配慮した男女共用トイレ
株式会社マイヤ 辻野晃寛
- すべての人に愛されるトイレへ~成田国際空港トイレリニューアル~
セミナー開催の挨拶
(浅井) 日本トイレ協会でJTAトイレ賞委員会の委員長をしている。
公衆トイレを綺麗にしていこうという運動から、1985年に日本トイレ協会が設立された。
全国の綺麗な公衆トイレの事例を取り上げることで、良いトイレがどんどん増えていってほしいということで、表彰を始めた。当初は「グッドトイレ10(テン)」といって、毎年、好事例を10か所選んで表彰していた。
これは15年ほど続いて、延べ1000件ほどの応募があった。
その後は、グッドトイレ10からグッドトイレ選奨という名前に変えて、建物だけではなくて、活動やメンテナンスなども含めて、表彰してきた。
トイレに関する活動が様々な分野に広がってきたので、2021年に四つの部門賞を設けた。
そして今年からJTAトイレ賞という名前に変更した。
(高橋) 今日は、昨年、2022年のグッドトイレ選奨に選ばれた方々のお話を伺う。
①すべての人に愛されるトイレへ~成田国際空港トイレリニューアル~
(阿部) 株式会社空間デザインの代表取締役の阿部です。
弊社は建築設計会社で、1996年に設立され、社員数は約28名。
フレックスタイム制度やテレワークなどを導入して、経産省の健康経営優良法人の資格を取り続けている。また、災害が多い中でレジリンス性能の高い建築作りをやっている。
(岡本) 成田国際空港のトイレの改修工事は146ヶ所あるが、その中でも、全面改修されたところが5ヶ所あった。
トイレの改修にあたって、日本で古くから美しいと謳われている「雪月花」をモチーフにして、四季のある日本の心の風景を表現した。
到着ロビーのトイレでは、旅の始まりの高揚感を盛り上げるように、花をテーマにした。
出発ロビーのトイレは、旅の終わりが近づく静かな夜のイメージとして月をテーマにした。
出発コンコースのトイレは、搭乗前の最後の日本を惜しんで、雪をテーマにした。
広めのパウダーコーナー。おむつ替えシートなども男女ともに設置した。
トイレ内を全体的に見渡せるようにして、防犯性や混雑緩和にも配慮した。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催前だったので、国際パラリンピック委員会が示したガイドラインに準拠した東京2020アクセシビリティガイドラインを守った。
例えばトイレブースは、スーツケースやベビーカー、車椅子でも入れる大きさとした。
雪のトイレは、施主からトイレを明るくしてほしいという要望があった。
全体的に均等な明るさを考慮し、柔らかな光にするために、間接照明を取り入れた。
手洗い器やパウダーコーナーは、高さに変化を持たせて、身長差や、手持ちかばんなどの大きさによって、利用者が場所を選べる。
月のトイレでの手洗い器の下部は、車いすの足が当たらないように形状を工夫している。
床にサインを設けて並ぶ位置を制限して、手洗い器との動線を分けている。
天井照明は、空に月が浮かぶようなイメージになっている。
花のトイレは、女子トイレブースを円形に配置した。
空室をわかりやすくするために、ブースの扉が開いているときと閉まっているときで、扉の色を変えている。
(浜鍜)到着ロビーの花のトイレでは、オールジェンダートイレを新たに設けた。
成田空港の新しい試みとして、多機能トイレとは別に、性別を分けないトイレを1ヶ所設けた。これは、大人2人程度が入れる広さとし、防犯性を考慮して入り口近くに設置した。
この検討に当たって、日本発達障害ネットワークの方々へヒアリングを行った。
介助者が用便中に、被介助者、特に発達障害のある方が扉を開けて出ていってしまうという懸念があったので、入り口近くに大便器を置き、被介助者は、奥に待機スペースを設けた。
待機スペースの壁には柄のあるタイルを用い、それを眺めることで、他のところに気を取られずに待ってもらえる工夫をしている。
扉のカギは上下2箇所に付けて、すぐに鍵を開けられないようにしている。
場所としては、トイレ空間に入って、正面の一番目立つところにあり、オールジェンダーとサインが掲げられている。
多機能トイレは、右利き用、左利き用と、対称な2室を設置した。
一方の部屋にオストメイト対応の汚物流し器を設けた。
もう一方は、子どもを洗うことができる高さの低い流しを設けた。
質疑応答
(HOさん)空港トイレの特有の設備は何か。
(岡本)荷物を乗せたカートがよくぶつかるので、腰壁の材料的な強度は求められた。
大型カート用ブースについても、突っ込んできてもいいようにスチール製の材料を使うことが多かった。足元にもぶつかるので、幅木を高くしている。
(浜鍜)視覚障害のある人への対応として、壁面の手すり、紙巻き、操作ボタンの配置を共通化した。
案内サインは、視認性が高くなるように、背景の壁との明度差をつけた。
多言語対応として、トイレ入り口に4カ国語対応の音声案内を設置した。
案内サインも4カ国語で表記している。
(KAさん)雪のトイレでは、手洗い器が室の中央に設置してある。視覚障害のある方々にとっては非常に見つけにくい。
手洗い器がカウンターに埋め込みではなく、カウンターの上に置いてある。車いす使用者のように体幹の機能が十分でない人間には、身体を支えるところがなくて使いづらい。
(浜鍜)その指摘は計画時にもあった。手洗い器を室の中央に設置したのは、入口から全体が見渡せるということと、華やかさを優先した。
使いにくい方のために、壁側に、体を支えられる手洗い台を1箇所、設置している。
②学校施設のトイレに求められる音環境の探索
(矢口)岡山県立大学大学院デザイン研究科の矢口です。
小学生から高校生に対する調査によれば、他人に知られたくないとか、落ち着かないという理由で、かなりの子供たちが学校でトイレを我慢していることが明らかになっている。
既往研究では、自宅外では、約6割がトイレ使用時の排泄音を気にしている。
気にする人の多くが、排泄音を隠す工夫として、水を流したり擬音装置を使ったりしている。
擬音装置は、商業施設などではほとんどのところで設置されているが、学校施設では設置されていないところが多く、設置指針もない。
香川県内のとある中高一貫校で、2021年に全校生徒557名、2022年に521名を対象に調査を行った。
また、より親密度の高い集団として、この中高一貫校に併設されている学生寮生を対象に、今年度も同様の調査を行っている。
学校のトイレで大便をすることについて、女性は78%、男性は52%、全体では60%が抵抗を感じていると回答した。子供たちの多くが、学校での排便を我慢していると考えられる。
排泄音を隠したいと思う人の割合は、女性は92%、男性は58%で、男女ともに多かった。
学生寮でも同様の調査を行ったところ、寮生でも排泄音を隠したいと思う人の割合は、女性81%、男性50%だった。寮生間のように、関係性がより限定的かつ親密であっても、排泄音への抵抗は学校での調査とほぼ同様だった。
また寮生に、寮と学校どちらのトイレの方が利用しやすいか聞くと、女性は、清潔さと、擬音装置が設置されていることから学校の方が利用しやすいという回答が多かった。
男性は、親しい関係の方が排泄しやすいという傾向があり、学校では周囲を意識し排泄に抵抗があることがわかった。
擬音装置の認知度は、女性はどの学年もほぼ100%近く、使用経験も90%以上だった。
男性の認知度は学年が上がるごとに増加する傾向があるが、高校3年生でも85%だった。
また使用経験も20%程度にとどまっていて、男女で大きな差があった。
次に、トイレ空間の音響測定を行った。
現状のトイレ空間の発生音の大きさを測定し、各地点での減衰量を明らかにした。
その結果、個室内での擬音装置の音量に差があることがわかった。
また、音が廊下まで聞こえてしまっていることがわかった。
自由記述では、夜の学習時間には擬音装置に限らず、足音やトイレ音まで外に響いているという意見もあり、トイレのパーテーションの遮音性能の向上が必要であると考えられる。
擬音装置仮設実験では、周波数特性の異なる三つの音源を使用して比較した。
音源として、LFでは200 Hz付近、MFでは500 Hz付近、HFでは2000 Hz付近で一番大きくなるようにした。再生音量は便房内で70デシベル、再生時間は35秒に設定した。
35秒の再生時間について、女性は適切と感じた人が増加した。
途中で止められる機能があれば再生時間を長くすることは効果的であったと考えられる。
既存の擬音装置の音量である70デシベルだと、いずれの音源でも少なくとも20%程度以上の人が音量が大きいと感じていた。既存の擬音装置の音量設定が過剰である可能性も考えられる
周波数としては、既存の擬音装置に近いMFの評価が最も高い結果だった。
学校施設における擬音装置について、女性は9割以上、男性は5割以上が必要だと答えた。
男性は排泄音を隠したいと思っている人が約6割程度いるのに対し、擬音装置の設置要望は4割程度と差があった。
擬音装置を使用すると、排泄していることが目立ってしまうという意見もあった。
また、寮生に学生寮への擬音装置の設置要望を聞くと、女性の80%、男性の20%に擬音装置の設置要望があった。関係が親密でも、排泄音への抵抗はあることがわかる。
<今回の調査のまとめ>
中学生、高校生は、男女ともに多くの人に排泄音を隠したいという意思があることが明らかになった。
壁の遮音性能向上など、建築的対応の必要性も示された。
男性用トイレには擬音装置がなく、また男性は擬音装置を使用することに抵抗感があることがわかったため、女性用トイレと男性用トイレではそれぞれで適した排泄音のマスキング手法を考える必要性が示された。
質疑応答
(KAさん)自分が排泄しているタイミングを隠したいのか、自分が排泄することによって出る音を人に聞かれるのを隠したいのか。
自分が排泄するタイミングを隠したいのであれば、擬音装置を作動させると周りの人に排泄していることがわかるから、部屋中を常に騒音状態にしておくのが一番有効になる。
(矢口)自分で擬音装置を作動させるという他に、タイミングを隠したいので個室に入った瞬間から自動で擬音装置が作動することを望んでいるという結果も出ている。可能性としてはどちらも考えられる。
擬音装置以外で騒音状態にするものとして、今後BGMの検討も考えたい。
(MUさん)70デシベルという数値の根拠は?
(矢口)今回調査したトイレの擬音装置が70から80デシベルだった
(MUさん)マスキングというのは、原音に対してのマスキング効果だから、原音の状況を知る必要があるのではないか。
(矢口)実際の排泄音を測定するのが難しくて、できていない。今後は模擬的な状態で測定を行いたいと思っている。
排泄をしている当事者が排泄しやすいと感じるには、本当に排泄音をマスキングされていないといけないのか、それとも排泄音が周りに聞こえていないという安心感があれば大丈夫なのかという可能性もあるので、そこも模索していきたい。
(MUさん)私はそちらの方が重要ではないかと思っている。発達障害者の中には、音が嫌いな人が結構いる。
(矢口)擬音装置の利用が最適解だとは考えていない。今後、いろんな方にとって快適なトイレ空間とは、どういう音環境であればいいのかというのを最終目標としていきたい。
③トイレを清潔に保つための清掃依頼ボタンの導入評価
(関谷)中日本高速道路株式会社東京支社保全サービス事業部施設課の関谷です。
トイレの印象や経験は、高速道路利用時の快適性に繋がる要素と考えている。
「清掃依頼ボタン」は、2013年から東名高速道路足柄サービスエリア下り線にて、試行運用を行っている。
「清掃依頼ボタン」は、トイレのよごれを利用者が発見した際にボタンを押して、清掃員にリアルタイムで知らせるシステム。
2013年当初に整備した「清掃依頼ボタン」は、汚れていることを知らせるだけのものだったので、汚れている場所を見つけることが困難だった。
そこで、2018年には、どこが汚れているかわかるように、トイレのエリアを、個室内、洗面、通路の三つに区分し、よごれを通知するボタンを三つに増やした。
また、ボタンの改良とあわせて、エリアキャスト(清掃員)への通知も、エリア区分を設けた。通知を受けて清掃した後には、清掃員が、汚れていた、あまり汚れていなかった、全く汚れていなかった、から選択して登録する仕様に変更した。
また、客が自然とボタンを見つけられるようにハンドドライヤー上部へ設置した。
「清掃依頼ボタン」を設置したことによって、汚れたままになっている時間を削減できた。
「清掃依頼ボタン」の通知数は、トイレの利用が増える正午前後に増えている。
清掃員からの登録は、全く汚れていなかった、というのが多い。清掃員へのヒアリングでは、いたずらで押している可能性が高いということがわかった。
「清掃依頼ボタン」は2013年から試行運用してきたが、トイレの美化、CSの向上に寄与する効果があることを確認できた。
しかし、通知されたよごれを探す労力や、いたずらによる通知が、清掃業務に支障を与えているということも同時にわかった。
質疑応答
(山本)補足する。
トイレが綺麗な状態をなるべく維持するように頑張ってはいるが、目新しすぎていたずらが多いというのがわかった。会社の中では、今後の展開について悩ましくなってきている。
(MUさん)いたずらに対する予防策はあるか。
(関谷)ボタンを押すと、音は鳴らないで、ボタンが光る。
ボタンを押して大きな反応がないので、特に押す事に対しての抵抗が低く、いたずらにつながっているかもしれない。
通知ボタンを押した人の年齢層は調べていないが、ボタンは床面から1300ミリ程度なので、小さな子どもでも、押すことはできる。
(山本)補足する。土日ではなく、平日にドライバーが通知していることが多い。
(TAさん)夜間の通報はどうか。夜間の方が、汚しそうな感じがする。
(山本)ログデータでは、夜間に汚れを通知するボタンを押す人はいなかった。
施設にもよるが、夜間の巡回清掃をやっているところもある。
(HOさん)汚れのレベルで通知するのではなく、すぐに清掃してほしいとか、少し待ってもいいとか、そういった緊急の度合いの方がいいのではないか。
(関谷)調査の当初の目的として、客がどれくらい汚れに気づいているのかを知りたかったという面もあり、そういう意味では解析に必要なデータは得られたと思っている。
(HIさん)汚れたと通知のあった便器を、次の人が使っていて調べられない場合、それも汚れていないという項目に含まれている可能性はないか。
(関谷)システムの流れは、利用者から汚れているという通知があって、清掃員が行く。清掃員が探して汚れの程度を見て、汚れていた、汚れていなかった、というのを登録する。
利用したときに汚した場合は、利用した後に通知もできる仕組みになっている。
④認知症になってもやさしいスーパー・プロジェクト認知症の方に配慮した男女共用トイレ
(辻野)株式会社マイヤの辻野です。
弊社の本社は岩手県大船渡市にある。関連企業を含め、岩手県、宮城県の9市2町で20店舗のスーパーマーケットを展開している。
「認知症になってもやさしいスーパー・プロジェクト」は2019年7月より、岩手西北医師会、認知症の人と家族の会、滝沢市地域包括支援センター、滝沢市社会福祉協議会と、弊社が始めたプロジェクト。
外出機会を増やし、認知症の進行を少しでも遅らせることができないかとの狙いで、滝沢市で開業医をしている紺野医師からの提案で実現した。
本プロジェクトは、2020年度より3年間、経済産業省の補助金事業に採択されている。
<スローショッピング・パートナー活動>
スローショッピング、パートナー活動、くつろぎサロンの三つの取り組みがある。
利用者はまず、くつろぎサロンに集まり、受付。
体調や近況報告などを済ませ、買い物へ向かう。
店内の床には売り場の案内を大きく表示。上を見上げなくても、どこに何があるかがわかる。
ショッピングカートにも、店内の案内図を入れた。
スローショッピングでは、希望者には、パートナー(協力者)、家族や社会福祉協議会、医療関係者が同行し、買い物を手伝う。
スローショッピング参加者は、ゆっくり会計ができるスローレジを優先的に使うことができ、レジでは、認知症サポーターの講習を受けた従業員が対応する。
買い物の後は、再びくつろぎサロンに集合。ここは世間話をしたり、介護の悩みを相談したり、いろいろな人との繋がりを持つ交流の場にもなっている。
<バリアフリー>
バリアフリーへの取り組みでは、店内掲示、ゆったり安心トイレ、店舗までの移動支援、音響・照明調整の4つを行った。
2022年4月に改装を予定していた弊社マイヤ仙北店に、店内改装と並行して、ゆったり安心トイレを設置した。
改装に際し、認知症当事者やその家族、またパートナー(協力者)の皆さんなどからの意見で、トイレはイートインスペースからすぐ行ける場所に設けた。
食事をする場所のそばなので、トイレを感じさせない入口にして、臭いも出ない設計とした。
トイレ入り口には簡易な図面を掲示して、トイレの内部の紹介と、このトイレのコンセプトを説明している。
便房の外側には、同行者が外で待つ場合に座るベンチを用意した。
便房内には、大人用オムツが捨てられるよう、大きめのおむつBOXを置いた。
改装1年後にヒアリング調査を実施した。
概ね好印象で、広くて動きやすいことに高評価が得られた。
全体的なデザインについても肯定的だった。
照明については、明るくて良いという意見と、もう少し明るくても良いという意見があった。
男女共用であることについて、特に気にならないという意見もあれば、少し戸惑う様子を見せた人もいた。
車いす利用者にとっては狭く、1人では利用できないとの感想があった。
2035年には認知症および認知症予備軍が日本全国で800万人になると推計されており、認知症共生社会の実現が期待される。
地域共生社会に貢献するとの企業理念の発信は、企業価値の向上に繋がる。
一方、認知症の人には、買い物といった経済活動への参画機会の確保、外出、歩行機会の提供、孤立の解消、楽しみや娯楽の機会といった効果が期待される。
質疑応答
(HOさん)認知症への対応は一人一人で違うが、どうやっているか。また、トイレについては、認知症のどのレベルに焦点を当てるべきか。
(辻野)軽度の認知症の方を対象としている。
また、トイレのことに関しては、やはり費用対効果を考える。
スローショッピング・パートナー活動のパートナー活動だけをやる店舗と、トイレ等のハード面を含めて、全体的に取り組む店舗と二つに分けて進めていこうとしている。
(KOさん)介護する人が一緒に入る場合も含めて、いろいろな人に使いやすい快適なトイレを造ると、当初は想定していなかった幅広い人が使うようになると実感している。
(野口)研究者としてこのプロジェクトに関わっている。
認知症の人は、環境を整えれば、本当にできることが増える。
マイヤは、スローショッピングという形で環境を整え、そして、店舗によってはトイレ等をバリアフリー化しており、その結果、認知症の人も、認知症になる前と同じように買い物を楽しむことができるようになっている。
ゆったり安心トイレは、車いすの人は回転できないが、店舗の反対側に車いす使用者用のトイレは造られている。
ゆったり安心トイレは、認知症の人が介助者と一緒に入れるトイレを目指したが、実にいろいろな方が次々に使っている。若い男性が多かった。
認知症の方のための環境整備というのは、ほんとうに多くの方に使いやすい店舗になると実感している。
(KAWさん)スローショッピングの実施について、日時限定ではなく、認知症の方も一般の方同様、常時スローレジを設ける方がより共生と言える気がする。
(辻野)このスローショッピング・パートナー活動は、四つの協力団体が少しの負担で継続して取り組んでいけることが重要。
確かに、いつでもゆっくり支払いできるレジを設けるのは、認知症の方に限らず、必要なことではあるとは思うが、人件費などコストの問題、人手不足の問題がある。
この取り組みを長続きさせるためには、我々も少しの負荷で進めたい。また、パートナー(協力者)も、全てボランティアなので、毎日は難しい。
一方で、この店舗では従業員のほとんどが認知症サポーター養成講座を受講しているので、買い物の手伝いはいつでも対応できる準備はしている。
(武者)音の専門家としてこのプロジェクトに関わっている。
店内のBGMを止めてしまおうという提案をした。認知症の方は情報過多になると、不安に陥ったり、パニック状態に陥る危険性の引き金になる可能性がある。
物理的な環境整備はすごく重要で、それに人の支援や運用の工夫などを絡めていくことが非常に重要だと、今回、私も参加して教えてもらった。
終わりの挨拶
(高橋)最後に、去年のグッドトイレ選奨の審査員長だった上野先生にコメントをいただきたい。
(上野)応募作品の資料のみで審査評価をしているので、皆さんの真意をなかなか理解しにくい面があるが、今日、皆さんから説明をいただき、非常にわかりやすくなった。
そして、皆さんの取り組みは、いずれも、それぞれの賞に見合ったものであったと実感した。
今年からJTAトイレ賞と名前が変わるが、ぜひご参加いただきたい。