第19回「うんと知りたいトイレの話」報告
「観光トイレツーリズムを考える」~広島県府中市の取り組みから~
- 講師:岡田啓伸(おかだ ひろのぶ)さん(府中市役所 建設部 都市デザイン課 都市計画係)
矢崎尚子(ヤザキ ショウコ)さん(府中市役所 経済観光部 観光課 観光振興係)
一般社団法人 日本トイレ協会、連続セミナー「うんと知りたいトイレの話」(2022年12月15日)
【広島県府中市の紹介】
(岡田さん)広島県府中市は、古代に都と九州の太宰府を結ぶ主要幹線道路である古代山陽道が設置され、備後国、現在の広島県東部の行政府である備後国府が置かれていた。
府中市の市街地は、平安時代に至るまで約500年にわたり備後地域の政治、経済、文化の中心地だった。
その後、江戸時代には、瀬戸内海側と日本海側を結ぶ主要街道である石州街道の宿場が設けられて、発展した。
そして中世から物資の集散地であって、周辺から集まる農産物を加工する産業が発達した。備後絣という綿織物やタバコの製造、あと木工業、府中味噌などの醸造業などが家内工業として盛んに行われてきた。
現在、府中市の主な産業にはそういった名残があり、繊維関係、家具、味噌など伝統的な特産品の他、最近は、機械金属、化学ゴム製品、非鉄ダイカスト製品でラジコン、ヘリコプターなどの工業製品もある。
2020年現在で、市内企業のうち63社が100年以上存続している。
【府中市観光振興ビジョン】
府中市の観光振興ビジョンを、2020年6月に策定した。
その目的として、「びんご府中」に市外や海外から多くの人々を招き交流し、体験するとしている。
府中市という名称はよそにもあるので、私たちの町は「びんご府中」という言い方をする。
府中市は、自然や歴史、ものづくりなど地域資源を生かした観光産業の振興をこれまで掲げてきたが、観光客数や観光消費額の大幅な増加といった成果に繋がっていない現状もあって、抜本的な戦略作りが求められている。
府中市内の多くの観光資源を情報発信するとともに、観光客を温かく迎え、交流し、おもてなしをする環境作り、推進体制作りを総合的に進めていく必要があるということで、2020年6月に観光振興ビジョンを策定した。
そのビジョンの中で、観光客の受け入れ環境整備として、公衆トイレの便器の洋式化とか、多目的トイレや清潔さに関わる設備の充実、ピクトサイン等による表示の設置など、高齢者や障害者、外国人など様々な観光客にとって利用しやすい環境を順次整えていく必要があると記載されている。
ビジョンを策定した当時で、市内の観光施設のトイレの洋式化の割合は、便器総数ベースで43. 9%、温水洗浄機能付き便座の設置率は26.8%となっている。
アクションプラン、実施方針として、観光客が数多く訪れる公共トイレから優先的に整備することで、順次市内におけるトイレ環境の充実を図る。
さらに、公共施設の他、観光客へのトイレ提供に協力してもらえる店舗・事務所等に「びんご府中おもてなしトイレ」のステッカーを貼ってもらって観光客の利便性向上を図るとともに、観光のホームページでも周知を図る。
あわせて、高齢者や障害者、子ども連れなど多様な人が訪れやすいバリアフリーな観光エリアとなることをめざして、多目的トイレの設置箇所についても、観光のホームページで周知するということが、ビジョンの中で書かれている。
【「びんご府中おもてなしトイレ」ロゴマークの決定と協力事業者の募集】
そういったビジョンの方針に従って「びんご府中おもてなしトイレ」のロゴマークを決定した。
このロゴマークの決定を受けて、「びんご府中おもてなしトイレ」の協力事業者の募集を2021年1月から開始した。
その応募条件は、以下の3点。
1点目は、清掃が行き届いている。
2点目は、洋式トイレが1箇所以上ある。
3点目は、利用者へのおもてなしがされている。これは、花や絵を飾ってあったり、何か利用者におもてなしの心が工夫されていたりするもの。
これら3点について審査して、「おもてなしトイレ」と認定している。
【デジタル技術等を活用した観光地スマート化推進事業補助金】
広島県の一般社団法人観光連盟が2020年から2021年にかけて実施した補助金、「デジタル技術等を活用した観光地スマート化推進事業補助金」を受けてトイレ整備に充てた。
この補助金は、新型コロナウイルス感染症後の観光需要の回復を見据えながら、誰もがストレスなく安全安心に周遊観光を楽しめるように、観光地や観光施設等を対象にデジタル技術等を活用した観光インフラ整備を行う経費に対するもの。
【実際に整備したトイレ】
(矢崎さん)観光連盟の補助金を使って整備をした5つの特徴的なトイレについて説明する。
<神宮寺あじさいトイレ>(竣工日が2021年9月19日)。
神宮寺では「あじさい祭り」を毎年6月上旬から下旬まで開催している。
神宮寺のあじさいは、観光客誘客のために、地元町内会等が中心となって植えた。それで神宮寺を訪れる観光客が増え、受け入れ環境を整備するためにトイレを設置した。
トイレの壁面にあじさいが描かれているが、これは近くの小学校の児童が描いたあじさいの絵を1枚1枚モザイクのように集めて、大きなあじさいの絵となっている。あじさいは府中市の花でもある。
これは、みんなの力を合わせると、大きな力になるということを表現している。
また、ギャラリースペースがあり、子どもたちの絵を年間を通じて展示している。
夜は、ステンドグラスやガラス部分が照らし出され、幻想的な外観となる。
<府中八幡神社もみじの森トイレ>(2021年に完成)
「府中八幡もみじの森実行委員会」が主体となって建てた。
ここはハイキング客が季節を問わず訪れているが、快適に使える衛生的な水洗トイレがなく、仮設トイレ1基だけだったため、地元から府中八幡神社にぜひトイレを設置したいという声が出た。
せっかく設置をするなら目玉になるようなトイレにしたいということで、地元が透明トイレのアイディアを出した。
トイレの個室の仕切りに調光ガラスが使用されていて、ドアの鍵をかけるまでは透明で、鍵をかけると壁一面にスモークがかかるというトイレ。
スモークのかかった壁面には、府中八幡神社の動画が流れる。
もちろん洋式トイレだが、新型コロナ対策として、洗浄機能の自動化などの衛生管理もなされている。
府中八幡神社は秋になると紅葉がとても綺麗になる。
近くの首無地蔵は、首がないお地蔵さんがいるところで有名。
<協和地区観光トイレ>
地元の絵師によって正面の壁一面に描かれた龍と地面に描かれた地球が立体的に見えるトリックアートとなっており、今にも飛び出しそうな絵柄が特徴。
横の案内看板のQRコードを読み込むと、周辺の観光地の情報も得ることができる。
この龍の絵がSNS映えするということでバイク乗りを中心に人気を集めており、観光客も多く立ち寄っている。
ここは阿字和紙というのが有名で、今、その阿字和紙の復興に地元が取り組んでいる。
<法界山マルシェトイレ>
法界山直販センターは、府中市と上下町を結ぶ幹線道路沿いにある。改修前は、約30年前に建てられた簡易な建物で野菜を販売しており、夏は店内が高温になっていた。また、コンクリートの床は段差による事故の危険性があるなど、改善が必要だった。
観光客をはじめ誰もが気軽に立ち寄って新鮮野菜を楽しめるよう、また地元の高齢者にも安心して働ける店舗を目指して、ユニバーサルデザインに配慮しながら、店舗部分とトイレ部分を中心に整備を行った。
この周辺には矢野温泉公園四季の里、キャンプ場、昔ここで雨乞いが行われていたといわれている「雨乞いの岩」という神聖なスポットがある。
<上下町商工会トイレ:>
以前から公衆トイレはあったものの、設置から30年以上経過していたため故障が頻発するなど、トイレの老朽化が著しい状態にあった。
国登録有形文化財に登録されている上下町商工会館やその東側にある白壁の町並みなどを訪れる観光客のために、24時間利用でき、かつ、車椅子の方や家族連れ、幅広い方が安心安全に利用できるトイレを新たに整備した。
外観は、白壁の町並みにマッチした町家風の、格子の壁になっている。夜になると、縦格子の隙間から照明の光が綺麗にもれてくる。
ここもデジタル技術を活用した自動洗浄機能など、衛生管理を徹底するとともに、高齢者などに配慮した多目的トイレを設けている。
トイレだけではなく、自動検温システムや、ひな祭りの紹介をするデジタルサイネージなど、デジタル技術を活用している。
【びんご府中観光トイレツーリズム】
(岡田さん)トイレとその周辺の観光スポットを巡る観光を、「びんご府中観光トイレツーリズム」と名付けている。観光客の受け入れ環境整備だけではなく、トイレ自体も、観光スポットとして売り出そうとしている。
府中観光トイレツーリズムに関しては、市の広報誌でも何回も取り上げている。
男性トイレにサニタリーボックスを設置している箇所についても、トイレにSマークをつけて、広報紙で周知をしている。
府中市としては、トイレの持つ可能性を最大限にいかして、観光振興に取り組んでいる。
まずは観光コンテンツやプロモーションを充実させ、多くの方に府中に訪問してもらい、来訪者に府中市を気に入ってもらって、リピーターとなってもらい、周囲の知人に知らせてもらうことで、さらに多くの方に訪問してもらえるようになることが重要だと考えている。
そのためには、観光コンテンツに加えて、受け入れ環境の充実などによって、府中市に良い印象を持ってもらうことが必要だと考えている。
旅行者への調査から、トイレの整備状況が訪問者の印象を決定づける大きな要素であることがわかったので、府中市では、皆様が快適に利用できるトイレを、地域の人たちの協力を得ながら、計画的、段階的に整備している。
ユニークなトイレはテレビ放送もされ、評判を呼んで、トイレを利用した多くの方から好意的な声が現在も多く届いている。
訪問者にとって快適なトイレを提供して、地域や府中市に良い印象を持ってもらって、びんご府中のファンづくり、選ばれる観光地作りの推進に取り組んで行きたいと考えて、PRを行っている。
【こどもの国のトイレ】
(岡田さん)府中市の市街地に、「府中市こどもの国」という、公園と児童館が一体になった施設がある。ただ、公園にトイレがなかった。
広島県が全国の建築を学んでいる大学生や専門学生の方を対象に、テーマに応じた設計やデザインを募集して、その最優秀作品を実際に建築する「広島建築学生チャレンジコンペ」という取り組みがあり、2021年のテーマが「府中市のこどもの国のトイレ」となった。
子どもたちも利用するような公園のトイレで、中にホールを設けて、保護者が子どもを見守れるようにした作品が最優秀賞に選ばれて、現在、工事をおこなっている。
「府中市こどもの国」という、年間12万人も利用するようなところの公園のトイレなので、ここも含めてツーリズムの振興をやっていければと思う。
(川内)この府中市の観光トイレについては、日本トイレ協会運営委員で、株式会社アメニティの山戸さんが結構早い時期から注目していた。
(山戸さん)私はトイレのメンテナンスの仕事を全国で行っている。
日本財団が渋谷区と協力して、これまでにないトイレを作っていく「THE TOKYO TOILET」というプロジェクト(※)があり、我々も、トイレ診断やメンテナンスで、携わっている。(※THE TOKYO TOILET」はユニクロの柳井康治さんからの出資で、日本財団が運営のプロデュースをしている)
トイレのメンテナンスは、本当に真剣にやろうとするとすごくお金がかかる。
そのお金をねん出するために、日本財団や渋谷区観光協会は、トイレを観光資源にできないかという話をしていた。
「THE TOKYO TOILET」でできたトイレは、歩ける距離の中に著名なデザイナーの作品がたくさんあるので、学生や家族連れがそのトイレを見て回るようになった。
それを見ていて、トイレが観光資源になりうるのではないかと思い始めていた。
そのときに、広島県府中市のトイレが新聞に載っていた。その記事には「トイレ観光ツーリズム」という言葉があり、その考え方に関心を持ってホームページを見たら、すごく面白いことをやっているなと思い、話を伺いに行った。
実際に「協和地区のトイレ」を拝見した。トイレのそばに案内板があって、このトイレだけではなくて、周辺の観光案内も伝えていけば、本当にいい取り組みができるのではないかと思った。
【質疑】
(HOさん)デジタル技術とトイレのタイアップとして、QRコードで地域の情報を出していくというのも一つだが、例えばアプリなどを利用してトイレのQRスタンプラリーなども面白いかもしれない。
①トイレの清掃や紙の補充や修理メンテはどういう周期でどこの費用でなされているか。
②トイレそれぞれに個性があるのは楽しいが、デザインがバラバラなのですぐに見つけられないという課題はないか。
③今回のトイレの整備により、ツーリズムとして観光客の増加の効果は確認されているか。
(矢崎さん)日々の清掃やトイレットペーパーの補充は、地元の設置主体が中心となって行っているが、市に対してメンテナンス等を求めている。ただ、市としても予算等の制限があるうえに、今後トイレの整備をどういうふうに考えていくのかということについて、なかなかすぐには答えが出せない状況がある。
(岡田さん)このトイレの設置主体は市ではなく、地元の団体等になっている。メンテナンス等は設置主体が受け持つということで補助金等を出して整備している。
(川内)物販施設などであれば、そこで出る利益の一部を維持に使えるかもしれないが、トイレの場合はそこから利益が出ないので、作った後の維持の体制はとても重要だと思う。
それぞれのトイレのデザインがバラバラなのは、府中市が統一的に作っているわけではなくて、それぞれの場所のトイレを作ろうという団体がそれぞれの考えでデザインをしたから、バラバラになっているということか。
(岡田さん)地元の団体がデザインを話し合って整備したので、統一性がない。
しかし、どこも割と道路沿いにあったりするので、②の質問の、場所がわかりにくいという声はあまり聞かない。
逆に目立つので、バイクに乗る方とかから、寄りやすくて大変助かるという話はよく聞く。
(矢崎さん)③の効果について、観光客統計調査をやってはいるが、よくわからない。ただ地元の方から、トイレが整備されて結構人が増えたとか、SNSに載せるために写真を撮りに来る人がたくさんいるという話は聞いている。
トイレ自体の利用人数は調査対象にしていないが、その周辺の観光地の調査は行っている。
(岡田さん)例えば、トイレットペーパーの減る量とか、利用者数が増えてきたという話は聞くが、具体的な数字は把握していない。
(川内)府中市のトイレ整備は、地元からの声に応えて、そこに補助金を活用したということなので、地元の人たちのそのトイレに対する愛着がすごく強いという印象を受けている。
(岡田さん)例えば神宮寺のあじさいは、寺だけでやっていたわけではなくて、地元の方も入ってあじさいを植えたり管理したりしている。あじさいの時期に来る観光バスの誘導も、地元の方がボランティアでやっている。そして、来る人にトイレが必要だという地元の要望があったところで整備をしてきた。
(HIさん)「びんご府中おもてなしトイレ」の中には、多目的トイレも整備されているようだが、実際にどのようなトイレなのか、多目的トイレの中の設備の情報を提供されているのか。
府中市観光協会のホームページの中にびんご府中観光トイレツーリズムのページがあり、6箇所のトイレの紹介があるが、そこには設備の情報が記載されていない。
(岡田さん)おもてなしトイレに限らず、市の中の多目的トイレの場所やその設備情報は出せていない。
市としても、そういった設備等の情報を広く知らせるべきではないかという話があって、部署の垣根を越えて、トイレに関わる会議を開催できないか模索している。
Excelの形ではあるが、観光トイレだけではなくて、市の公共施設、公民館や観光施設や保育所などのトイレの設備情報をいま集めている。
(川内)特に多目的トイレを使う方は、設備があるというだけではなく、どのようにあるという情報を非常に求めている。
だから、多目的トイレの中の写真が2〜3枚あると、とても助かる。
(ONOさん)トイレの整備について、すぐに市民の理解を得られたのか。
(岡田さん)例えば、上下町商工会であれば、以前は観光トイレのようなものがあった。しかし、そこが借地で、その土地を返さなければならなくなり、トイレがなくなるという問題に直面していた。
それぞれの場所で異なる事情を抱えていた時に、観光連盟の補助金等があったので、活用することになった。
なので、トイレ整備に対しての反対は、特になかったと思う。
元々、市も予算がない中で、トイレに関する課題がずっとあった。それぞれの地域でキーパーソンがいて、市と考えがうまく合った。
(矢崎さん)ちょうど市の観光課に、広島県庁から担当部長が出向で来ていて、県の補助金を活用しやすい状況だった。
(岡田さん)県の方でも観光地でおもてなしトイレというのをやっていて、その担当部長から観光地のトイレは大事だというアイディアをいただいた感じではある。
(川内)府中市はそんなに観光資源があるのか?
(岡田さん)元々は商業工業系の都市で、観光には力を入れていなかったが、逆に言うと、伸びしろがあるとも言える。
これといった観光資源があったりするわけではないので、できるだけいろんなものを観光資源に使おうということで、トイレも、せっかく整備したので、トイレツーリズムを考えた。
(矢崎さん)2020年6月にできた観光振興ビジョンに、観光が府中市を支える産業の一つとなるようにするという文言がある。従来からの産業構造が変化する中で、府中市でも観光に力を入れていくという流れがある。
(ONOさん)整備の補助率を教えてほしい。
(矢崎さん)総事業費の5分の4は県から補助が出ている。
トイレの他にもデジタルサイネージとか、そういったものも含まれている。
(川内)トイレ自体のデジタルというのは何かあるのか。
(岡田さん)ガラス壁が曇ったり、トイレの自動洗浄機能とか、トイレの中に観光映像を流したり。
(HIさん)車いす使用者にとっては手すりの位置は左右まで知りたい。それから背もたれの有無を知りたい。
(HOさん)府中市のトイレが成功したかどうか、利用者数等の数値が必要だと思う。
(川内)府中市としては、主に宣伝の役割を担っていて、トイレの運営はそれぞれの地元の人たちがやっていると理解していいか。
(矢崎さん)府中市は広報への掲載や、観光トイレツーリズムという概念を売り出すといった役割で関わっており、整備や維持管理は地元に任せているので、各地元の維持管理の体制は把握できていない。
(川内)その維持管理は、専門の業者がやっているのか、それとも地元の方々がボランティア的にやっているのか。
(矢崎さん)地元のボランティアの方を中心にやっている。
(川内)まだトイレが新しいうちはそれでもいいのかもしれないが、定期的に本格的な清掃が必要になってくる。メンテナンスの体制をきちんとやっておかないと長く持たないという感じがする。
こういう公衆トイレでよく起こるのが、バンダリズム。器具を壊されたりする問題は出ていないか。
(矢崎さん)どれも造って1年ぐらいだが、今のところは出ていない。
(岡田さん)例えばトイレットペーパーの持ち帰りといった問題は、この五つ以外のトイレにもあるが、それをどうするかについて、実はあまり考えてこなかった。
市内にトイレ清掃業者もいるが、維持管理は地元の人やシルバー人材センターにお願いしていて、週1回綺麗にしてもらえればといったおおざっぱな感じで、特に仕様を決めてもいない。
造っても維持管理を考えていないのは、今後の課題だと認識している。
(川内)今日の冒頭で、府中市の観光施設では洋式トイレが少ないという話があった。
今回の観光トイレについては、全部洋式化するといったルールはあるのか。
(岡田さん)特にルールはないが、地元からの声で、今日ご説明した五つのトイレは、全部洋式トイレになっている。
(HOさん)このプロジェクトはこれで終了なのか。徐々に数を増やしていくのか。
(岡田さん)観光連盟の補助金はもう終わったので、観光連盟の補助金を活用して、というのは今後はない。
(矢崎さん)特徴的なトイレを増やしていくという話は、今のところはまだ出てきていない。
(川内)トイレに関して、何らかの利用者の反応というのが、市役所に投書などで来たりはしていないか。
(矢崎さん)NHKで全国的に放送された後は、電話での問い合わせがあったりした。
素敵な取り組みを地元主体でされていて応援しています、といった葉書が来たりした。
(川内)最後は観光場所の魅力が問われてくる。珍しいトイレは、最初に客を誘うきっかけになっているとしても、観光地そのものの良さがなければ、なかなかリピーターが来ないかなという感じがする。
(SIさん)私は日常的にトイレツアーをやっている。
トイレのことを目玉にしようとする行政の方はたくさんいるので、そういう人たちを繋げることに日本トイレ協会がお手伝いできるのではないかと思う。
ただ、担当者が変わると途端に熱が冷めるとか、トイレを造ってしまったら終わりということもよく見られるので、継続していくことが大切だと思う。
トイレの汚れの中には、素人でも落とせる汚れと、プロでないと落とせない汚れがある。きちんと事前に処理をしておけばひどく汚れずに済むとか、素人が掃除の際に便器に傷をつけてしまい、かえって汚れが取れないトイレもある。
なので、維持管理において、地元の方がやっていいことと、やらないほうがいいこと、自分たちでやれることと、プロに任せるところというのを整理しなければならない。
楽しいトイレの情報もいいが、管理する地元の人に、災害時にトイレが使えなくなったときの対応とか、緊急対応的な情報もあわせて提供していくといいと思う。