第18回「乳幼児のためのトイレプランニング」~保育園のトイレを発達から考える~

第18回セミナー

「乳幼児のためのトイレプランニング」~保育園のトイレを発達から考える~

  • 講師:村上八千世さん(常磐短期大学幼児教育保育学科准教授、アクトウェア研究所。)

一般社団法人 日本トイレ協会、連続セミナー「うんと知りたいトイレの話」(2022年11月17日)

 

【自己紹介】

(村上)私は設計者ではなくて、コーディネーター的な役割で、トイレプランニングに携わってきている。

2005年ぐらいに、たまたま大阪のO保育園で、トイレ環境の改善を行なった。そこで、トイレを変えることで保育がすごく変わるということがわかり、そこから乳幼児のトイレに関わるようになった。

【保育園のトイレプランニングにあたって知っておくと良いこと】

10数か所の保育園のトイレに関わってきているが、保育園が10個あったらトイレのあり方も10個あると思うので、ここでは私の関わったトイレについて述べる。

  • 預け入れ開始年齢  労働基準法によって、お母さんは産後休業8週間の取得が認められているので、多くの保育園では、赤ちゃんが生後57日以上から赤ちゃんを預けることができる。
  • クラスと子どもの年齢  保育園には0歳児クラスから5歳児クラスまでがある。保育園によって運営するクラスは異なる。4月1日の時点で、生後57日から、0歳11ヶ月の子どもが0歳児クラスに入る。1歳児クラスは1歳から1歳11ヶ月、2歳は2歳から2歳11ヶ月という分け方になっていく。4月に生後57日で入ってきた子どもは、年度末には1歳2ヶ月になっていて、11ヶ月で入ってきた子どもは1歳11ヶ月になっている。そうすると、年度末にはほぼ2歳児の子どもが0歳児クラスに所属している。1歳児クラスは年度末になると3歳に近い子どもが、2歳クラスだと4歳に近い子どもが所属していることになる。
  • 子どもの発達の目安  子どもは、大体3ヶ月ぐらいで首がすわって、5ヶ月か6ヶ月ぐらいで寝返りが打てるようになる。6ヶ月、7ヶ月ぐらいで支えなしで座れる。その後、つかまり立ちができたり、ハイハイができたりというふうになっていく。保育園によって排泄の支援のやり方には相当な違いがある。だから、0歳児クラスのトイレはこうなっていた方がいいと示すのは難しい。子どもは、支えなしで座れるようになれば、おまるに座って排泄することができる。ただしそれは子どもが排泄をコントロールしているのとは違い、タイミングが合えば、おまるで排泄することができるということ。おまるに座るということだけを考えれば、生後6ヶ月くらいで座れてしまう。子どもの発達の目安からすれば、2歳から3歳のころに排泄を伝えられるようになると言われている。確かにこのくらいにならないと言葉で伝えることはできないかもしれないが、排泄発達をどういうふうに捉えるかによって、何歳からおまるを使うのかとか、何歳からトイレを使うのかというのは、保育園によってそれぞれ違う。0歳児クラスではトイレもおまるも全く使わず、1歳児クラスに上がったら、トイレを使い出すと決めているところもあって、園によって排泄の支援の仕方はバラバラな状態である。3歳から6歳ぐらいになると、一人でトイレに行って排泄して、流して、帰ってこられるようになる。
  • 排泄回数  子どもの月齢が小さいときは、排泄の回数が大変多い。赤ちゃんの場合は反射で尿が出てしまう。しかも膀胱に溜められる量が少ないので、回数が多い。
  • おむつの交換回数  2015年に行った調査では、0歳児クラスで、保育園にいる間に4回から7回、おむつを交換している。1歳児クラスになると回数は減ってくるが、それでも3回から5回は換えているところが多い。今は紙おむつの性能が良くなっているので、この回数が減っている可能性はあるかもしれない。
  • 児童福祉法、児童福祉施設最低基準  児童福祉法に児童福祉施設最低基準というのがあって、保育園のトイレについての定めがある。そこで、必ずトイレを設けることが示されているが、0歳児クラスに便器を設置するのは義務ではない。保育室は子ども1人につき必要な面積が決まっている。園舎全体の面積が狭いところでは、トイレの面積もどんどん削られてしまうことも起きやすい。保育園の場合は、おむつ交換の回数が多いので、トイレは保育においてとても重要なのだが、トイレは最後に、余ったところに当てはめられたりすることも多いのではないかと思う。保育室の必要面積を確保しつつ、トイレを一番使いやすいところに配置することを考えていかなければならない。
  • 職員配置基準  保育士の数も配置基準が決まっていて、0歳は赤ちゃんが3人につき保育士が1人。多くのところはこれよりも多めにスタッフをつけているが、人数が少ない小規模のところになってくると、余分にスタッフをつけるというのがなかなか難しく、おむつ交換のときは、もうてんてこ舞いになっている。
  • 保育方針・保育方法  その保育園の保育方針を確認しながら設計を進めていかなければならないが、これが意外に難しい。改修の場合は、実際にそこを使っているスタッフと打ち合わせができるが、新設の場合は、どういうふうにしてほしいという要望を聞けないまま作らなければいけないこともある。保育業界ではいま、「子ども主体」というのがキーワードになっている。子どもが主体的に活動をするとか遊ぶということ。それを大前提にして、保育が行われなければならないし、そうしやすい環境が構成されるべきであると思う。

【保育園のトイレの問題】

1・2歳児クラスのトイレ 最初に関ったO保育園の改修前のトイレの状況の写真説明。

トイレに入るには引き戸を開けなければならず、1歳児クラスの子どもは、月齢によっては引き戸に指を挟んだり、引き戸を開けることができなかったりというような子どももいた。トイレ用のスリッパに履き替えている間に漏らしてしまうことも多かった。小さな子たちは、部屋で下着やズボンを全部脱いでトイレにやってくる。トイレで脱ぐと、床が濡れていたりするので、服が濡れてしまう。保育士が、5人をまとめてトイレに連れて行くので、おしっこをしたい子もしたくない子も、一緒に連れてこられることになっていた。

一般的に水回りの設備はまとめて配置すると設計上の効率が良いので、よくトイレの中に汚物流しや洗濯コーナーを一緒に設置する。すると子どもが触ったりして危ないので、1人で行かせられないトイレになり、保育士がついていかなくてはならなくなる。おまるを使い終わったら、保育室にはおまるを置きっぱなしにできないので、トイレの中に置いておく。洗ったおまるもトイレに干しておく。ということで、トイレには子どもに触って欲しくないものがあふれていることが多い。

便器に反対向きに座って、便器の後ろにあるフラッシュバルブにつかまって用を足す子どももいる。それで手が滑ってフラッシュバルブで顔面を打つことが結構あるので、フラッシュバルブも危険な要因になる。

月齢の低い子どもほど壁に向かって便器に座ることが多いので、トイレットペーパーが後ろの壁にもあるとよい。

子どもを一人でトイレに行かせられない場合は、保育士の数も限られているので、トイレに子どもたちをまとめて連れていかなければいけない。便器の数も限られているので便器の前に子どもを並ばせる。並んでいる間に子どもの中でいざこざが始まる。保育士はそれを調整しながら子どもたちにトイレを促す。そういうトイレタイムは、多くの保育園で見られる光景だと思う。

次の写真は保育室側から撮っている場面。

トイレの外では、月齢が低い子どもがおまるに座って用を足していて、その近くでは、保育士がおむつを交換している。さっきトイレの中にいた子は、戻ってきて自分でパンツやズボンを履いている。

同じクラスでも、いろんな発達段階の子が入り混じっていて、保育士は、多様な子どもを同時に世話している。

子どもは発達していくから、おむつ、おまる、トイレへと、1年の内で使い方も変化していく。

保育園のトイレではバケツ類も多く置かれている。様々な汚れたものを入れておいたり、夏などは濡れた水着を入れておいたりする。これも子どもが1人でトイレに行く時に危険な要素となる。

【トイレ=保育室(居室)

O保育園の1・2歳児クラストイレの提案

私は、トイレを考えるときには、トイレも保育室の一部として考えた方がいいのではないかと思っている。

排泄とか授乳とか食事場面というのは、本来は子どもとコミュニケーションを密に取る場面であり、そこで子どもと保育者の間の信頼関係が深まっていく。物置のようになったトイレに、たくさんの子どもを連れて行って、さっと終わらせて出ていくということでは、ゆっくり落ち着いてコミュニケーションをとれる状況ではない。これは、子どもの発達にも大きな影響を与えるのではないかなと思う。

気持ちいいとか、くつろげるとか、安心できるとか、保育室と同じようなインテリアでトイレを作ることができないのかなと思ったところから、私の取り組みは始まっている。

保育者との話し合いの中で、衛生的に使えるかどうかやニオイについての心配があった。衛生的であることは保育園のトイレにおいて大事なことであるが、これだけが優先されてしまうと、寒々しいトイレになってしまう。

衛生性を担保しながら、子どもの成長も大切にしたいと思って、O保育園のトイレに取り組んだ。

床は保育室と同じ材質にして、トイレの中まで続いていて、子どものバリアを取り除いている。保育室とトイレの間に扉はついているが、開けっ放しで使っている。トイレの壁は低くして、壁板にはスノコ状に隙間が作られているので、保育室側からもトイレが見えやすく、トイレの中からも保育室が見えやすい。便器に座った子どもから保育室の様子が見えることは、子どもに大きな安心感を与えると思っている。

便器がまだ大きすぎる子どものために、便器の横に、おまるを設置するスペースを設けている。

便器の背面壁に手すりをつけたり、手前に置き式の手すりを置いて、便器への移乗が子ども自身でできるようにしている。自由にトイレに行ける環境では子どもは意外と長く便器に座っている。排泄物が出るまでの時間や、出るときの身体的な感覚をゆっくり経験している様子が見て取れるので、子どもが自分のペースでトイレでゆったりと排泄できるようにすることは大切だと思う。

子どもが便器に座っている時間が長いと保育者はその都度付き合うのは難しくなるので、保育者が離れていても子どもの様子を確認できることが必要になる。子どもが安心して排泄ができることで、排泄の自立が促されると考えている。

それから、トイレの中が乱雑にならないように、収納をしっかり作ることも必要だと思う。

汚物流しやお尻を洗うシャワーパンや洗濯機がトイレと一体的にプランされることは非常に多いが、それがトイレ空間を複雑にするので、こちらの保育園では各機能を別のスペースに分けた。トイレとは別の場所にすることで、安全性を確保することにもなり、トイレ空間の居室としての快適性も上がる。

改修前のトイレは保育室と壁で区画されていて、トイレはそれぞれのクラスから引き戸を開けて入っていくようになっていたが、改修後は、どちらのクラスからも戸を介さないで行けるように、保育室に開いたトイレになっている。

同じ1歳児クラスでも、月齢が違うとトイレの使い方も全然違う。改修前におまるを使っていた子も、手すりをつけると便器に座れるようになる。月齢によって、便器の背面壁に顔を向けて座る子どもと、便器の背面壁に背を向けて座る子どもがいる。どちらの向きに座るかは子どもが自分の身体発達に合わせて、自分がやりやすい方法で決めて使っている。だから子ども自身が選択できる環境を用意することが必要である。

トイレットペーパーも、前と横と後ろに、3箇所につけて、どの向きに座っても使いやすいようにしている。このように自分でやり方を試すとか、自分で決めるというのは、子どもが主体的に生活していくということに繋がって行くと考えている。

改修前の古いトイレでは、子どもが便器の前に並ばされていたが、改修後は大人がついて行かなくても、急いでいる子は急いで便器に座るし、急いでいない子はおしゃべりしながらゆっくり座ったり、急いでいる子に譲ったり、子どもたち同士で調整している。大人が安心して子どもを見守ることができる環境では、大人がとやかく指図しなくても、子どもたちは自分たちで調整しあってトイレを使っている。

改修後のトイレでは、1人でトイレに座れるようになるのが、1歳児クラスでだいたい5、6ヶ月早くなっている。

つまり、環境によって、子どもの排泄の発達は変わるということが言えると思う。

S保育園の1・2歳児クラストイレの提案

S区で作った別のトイレの事例。S区では、トイレと保育室は壁で区画しなければいけないという決まりがあるので、1歳児クラスではトイレの中でおむつ交換ができるようにトイレを広くした。

乳児クラスでは、おむつを交換しながら同時におまるや便器に座る子どもを見ることができる位置関係が重要だと思っている。だから、特に0歳児のトイレを作るときには、おむつ交換のスペースとおまるや便器の設置場所を隣接させて計画するようにしている。

O保育園の0歳児クラストイレの提案

この保育園の0歳児クラスのトイレでは、保育室の中にトイレを作った。普段はカバーがかかっていて、カバーを取ると便器が現れる。便器の前でおむつ交換をしながら、同時に、便器に座っている子どもも見られる。

T保育園の3~5歳児クラストイレの提案

3歳以上の幼児クラスになると、トイレの設計に自由度が出てくる。

この保育園では、トイレを遊戯室の真ん中に置いた。子どもは遊びの最中も我慢せずにトイレに行ける。トイレの周りをくるくる回ったりしながら遊ぶ。トイレは汚い空間だという既成概念を壊したいという思いもあるし、3歳以上になってくると遊ぶことにものすごく集中するようになって、トイレに行くタイミングがうまく取れないことがある。そこで、できるだけ遊んでいる空間の中にトイレを作れないかなと思った。

O保育園3~5歳児クラストイレの提案

保育室の中にトイレブースをバラバラに散在させた事例もある。これはトイレを隔離した空間としてではなく、保育室の中で生活する中でトイレを使うという考え。トイレブースを保育室の中に散在させると、空間的に出角、入角がたくさんでき、そこにごっこ遊びコーナーや絵本コーナーを配置して、変化のある空間になっている。

【子ども主体の「トイレ」「排泄」とは?】

子ども主体のトイレ、排泄とは、子どもが行きたいときに行ける、行くタイミングを自分で決められる、自分のペースで用が足せるということ。そして自分のやり方を自分で選択できること。自分の身体機能に合わせて後ろ向きに座ったり、前向きに座ったり、便器に座ってどこを持つとか、そういうことを自分で考えてできる環境にしておくといいと思う。

0歳児クラスの排泄環境に関しては、ハード的な工夫と共に周りの大人に排泄することを読み取ってもらえることも重要になってくる。紙おむつはとても便利だが、紙おむつをしていると、いつ子どものおしっこが出ているのかが保育士もなかなか読み取りづらくなる。

【乳幼児用トイレのプランニングのポイント】

  • 園職員との綿密な打ち合わせ  保育園のトイレ計画のポイントは、園の職員と綿密な打ち合わせをすること。ただ、これは簡単ではない。保育士は、トイレは区切られているものだとか、汚いところだ、臭いところだという、今までのトイレのイメージに強くとらわれていることが多い。保育士だけで、そのイメージから抜け出したものを考えるのは、なかなか難しいのかなと思う。だから、設計する側の人がある程度の保育現場の状況をわかっていて、その上で新しい考え方を提案するということが必要だと思っている。
  • 動線の整理  子どもの動線と大人の作業動線を分ける。いろんなものを置きっぱなしにしない。「子どもの排泄」以外の要素をできるだけトイレの中に持ち込まない。
  • 開いたプラン 自治体の規則によってできるところとできないところがあるが、開放的なプランにすれば子どもが1人で行きやすくなるし、子どもと保育者がアイコンタクトが取りやすくなるので、トイレに1人でいても、子どもも安心できる。
  • 居室感覚の快適さ 居室感覚の快適さを求めて、トイレの床材や壁材を思い切って保育室と同じようなものにしていくことも考えられる。材質はどんどん良くなっているので、メンテナンスの心配はなくなってきている。
  • 衛生性の確保  衛生性の確保は自治体から厳しく指導されるが、衛生性だけを優先すると寒々しいトイレになってしまうので、メンテナンスや清掃のしやすさが十分に検討されていれば良いのではないかと私は思っている。

【子どもが主体的にトイレに行くと・・・】

子どもから離れて見守ることができると、全体を見ることができる。

子どもが1人でトイレに行けるようになると、保育者の「早く何々しなさい」とか、「何々してはいけない」というような命令調の言い方がなくなり、保育者にも余裕が生まれる。逆に「いいウンチが出たね」「気持ち良かったね」など排泄に対する肯定的な声掛けが増える。子どもとの対話が増えることで子どもの表情やしぐさにも敏感になり、1人1人の子どもに丁寧に対応ができるようになる。子どもの発達は親や保育者との信頼関係がベースになるので、とても重要なことだと考えている。

子どもがやりたいことを自分でできるような環境にしておくと、大人がやってあげなければならないことが減る。

1人でトイレに行けるように環境を整えておくと、トイレットトレーニングも必要がなくなる。環境によって子どもの排泄発達の時期が半年から1年くらい前倒しになる。子どもの身体機能は準備できているのに、それを活かすことができないのは、子どもに申し訳ないと思う。本当はもっと早く排泄が一人でできるようになるということを作る人もわかっていれば、環境提案の仕方も変わってくると思っている。

【質疑】

(HOさん)写真では、周りのたくさんの子の中で平気で排泄しているが、幼稚園ぐらいになってくると、恥ずかしいという気持ちは芽生えないのか。

(村上)幼稚園には3歳以上の子どもが在席する。私が関っている園では3歳以上の子どもが使うトイレにはブースを設置している。ブースの扉はついている場合とついていない場合がある。ただ羞恥心は、社会的なものなので、保育園の文化によっても違う。

ある園では、当初5歳児のトイレに間仕切りがなく大便器と小便器が並んでいて、男の子と女の子が楽しそうに話しながら並んで使っていた。それが園舎を建て替えて1つ1つの便器がブースで囲まれ扉もつくと、それまでは用を足しながら楽しそうに話していた男の子と女の子も互いに恥ずかしがるようになった。

羞恥心は環境によってすぐに芽生えるといえる。保育園や幼稚園で扉がないトイレを使っていると、小学校に上がっても恥ずかしさを感じない子どもにならないかという質問をする人もいるが、それはないと言える。小学校に入って扉があるトイレを使うようになれば、扉を開けたままでは恥ずかしいと思うようになるだろう。

転園によって、扉があるトイレの園から扉がないトイレの園に移ってきたお子さんなどは、恥ずかしさを感じるかもしれない。最初からそうなっている環境では、子どもはおおらかに使っていることが多いのではないか。

また0歳児クラスや1歳児クラスでは、子ども同士で見るということは大変重要。他の子の排泄の様子を見て興味を持ったり、真似してみたりすることはよくある。おまるに座ったことがない子が、おまるに座っている子どもを見て真似る。自治体によっては、プライバシーの問題から見えないようにしなさいと言うところもあるが、発達のことなど総合的に考えて、検討するべき問題だと考えている。

(HOさん)ADHD(注意欠如・多動症)の園児が増えているが、トイレ教育も含めて留意する点はあるか。

(村上)4歳、5歳になってくると、発達障害(神経発達症)だと診断される子どもも少なくはないと思う。保育園でも増えている。発達障害(神経発達症)がある子どもも、排泄のことをしっかり見ていると、症状がよくなるという話もあり、行きたいときにすぐに行きやすいトイレ環境はどんな子どもにとっても良いのではないかと思う。また、排泄は子どもが小さい時ほど習慣づけやすいので、発達障害(神経発達症)だからといって適切な排泄支援を遅らせるのはよくないのではないかと思う。排泄してすっきりするという環境が保証されているというのは、どんな子どもの発達にも影響するのではないかと思う。

(川内)安心感がある、リラックスできるということがまず担保されていることが重要だということか。

(村上)そういうこと。排泄などの身体的な感覚は乳児にもわかりやすいことなので、保育士の話によると、排泄がうまく出来たときに褒めてあげると、乳児とのコミュニケーションが取りやすいという。

排泄以外のことで何かができて褒めるのと、排泄ができたときに褒めるのとでは喜び方が全然違う。排泄のときは、なぜ自分が褒められているかということが自覚しやすいのではないかと話す保育士もいる。

(川内)NAさんから。保育園での大便器や小便器の器具数について、何か目安はあるか。

(村上)S区では、大便器が5人に1基必要だと言われた。個人的には5人に1基は少し多い気がするが。

(川内)小便器は何歳児ぐらいから、設置するようになるのか?

(村上)私の関わっているところでは園によって2歳児クラスで設置したりしなかったりしている。

便器の数の基準を持っていない自治体もある。改修の場合は、それまでにあった便器数を基準に決めている。

(川内)小さい子どもは排泄の回数が多いとか、便器に座っている時間が長いという話を伺ったが、小さい子には便器数を多少多めにするということはないのか?

(村上)0歳児クラスや1歳児クラスの場合は、おまるで調整するのが現実的なところなのかなと思っている。おまるを置く環境について今後はもっと探求したいと思っている。

(川内)KAさんから。乳幼児対応トイレの器具等について、要望を聞きたい。

(村上)小さい子が使うトイレは、安全のためにフラッシュバルブを隠蔽したいが、隠蔽できる器具がない。

それから、おまるの汚物の処理と洗浄がしやすい器具があるといい。まだ小さくて、おまるに座れても便器に座れない子どもがいるので、おまるはやっぱり必需だと思っている。おまるはどこにでも持っていけるが、部屋の中で処理できるように、コンパクトな汚物流しのようなものがあると便利かなと思っている。

(川内)フラッシュバルブに頭をぶつけてしまうという問題は、手すりがないから、フラッシュバルブを持つために起こっている。だから、フラッシュバルブよりも手前側に手すりがあるといいのでは?

(村上)それもひとつの方法だと思う。子どもはどこでも持つ。便座にしがみついたり、フラッシュバルブにしがみついたり、タンクにしがみついて、便器に座ろうとする。便器の横の壁につける手すりは2歳児クラス以上になると使えるようになってくる。逆に2歳児クラス以上になると手すりが無くても簡単に移乗できるようになるが、0歳児クラスや1歳児クラスでは、便器の真後ろとか便器の手前に手すりがないとまだ不安定である。

(川内)保育園側がトイレ環境の重要性をどの程度認識しているのか?

(村上)保育者は子どもの排泄支援には膨大な手間をかけているので、トイレ環境が重要であることは十分に理解している。ただ、保育士からは、便器の数を増やしてほしいとか、手洗いが高すぎるとか、経験を通した要望は出てくるが、あまりにも既成のトイレのイメージに引っ張られ過ぎて、トイレの区画をやめることで発達が変わるといったようなアイデアはなかなか出てこない。

例えば私は0歳児クラスでもトイレが必要だと勧めているが、0歳児クラスではおむつをするのでトイレはいらない、1歳児クラスになったらトイレを使い始めることに決めていると言う保育園も結構ある。

(川内)東南アジアなどの写真とか映像では、子どもがおむつをしていない。社会によっては子どもにおむつをせずに育てていて、子どもはそれで早くから自分の排泄を示すし、親もそれを早くに感じ取る。日本も実は戦前ぐらいまではそのような状況だったと聞いている。

(村上)そのことについては私も大変興味を持っている。おむつを交換する回数は、布おむつに比べて紙おむつは少ない。今観察している保育園では、布おむつと紙おむつを両方使っているが、紙おむつの時は複数回の排泄に耐えられるため、都度交換しないし、保護者が持ってきたものを使っているため、できるだけ消費を抑えようとする心理が働くので、交換回数が少なくなる。排泄の世話は単なるルーティンワークではなく、子どもとのコミュニケーションの場なのに、おむつ換えの回数が減るとコミュニケーションの機会が減少してしまうことにもなる。子どもは、排泄物が出たら「出たね」と言ってもらうことによって、出たと認識できるようになる。

紙おむつはあまりにも性能がいいので、出ているか出ていないかが保育士にもわかりにくく、おむつ交換の回数が減って、コミュニケーションの機会が減るのはよくないと思っている。

(WAさん)(おむつなし育児研究所所長)保育の現場では、子ども主体の保育を大切にするというのが、統一した見解になっているが、子どもの排泄を、子ども主体でどう進めるのかというところが取りこぼされている。

0歳から主体的な排泄を促進するようなデザインのトイレが、より多くの園で作られていくことで、本当の意味での子ども主体の保育が進んでいくのだと思い、これからが非常に楽しみになった。