一般社団法人 日本トイレ協会、連続セミナー「うんと知りたいトイレの話」
(2022年9月15日)
●講師:小松義典先生(名古屋工業大学大学院ながれ領域 准教授)、日本トイレ協会運営委員
(小松)名古屋工業大学工学部、社会工学科、建築デザイン分野の准教授。
建築の中でも、建築環境工学が専門分野で、その一部である建築設備の中でトイレを扱っている。
【1.なぜコンビニトイレに着目したか】
今から17年前の2005年、ゼミで学生に研究の希望を聞いている中で、ある女子学生がトイレに興味があると言い出した。
家以外でどんなトイレを使っているかを聞く中で、夜は駅やデパートは閉まっているし、公園のトイレは怖い、となって、女子学生からコンビニのトイレをよく使うという声が出てきて、コンビニのトイレを調べ始めた。
調べてみると、夜型の都市生活とか、自動車での移動とかで、ニーズが少し変わってきているのではないかと気づいた。
特に都心部では公共トイレが不足している。予算の制限とか、都心部では場所の確保が厳しいということで、なかなか公衆トイレが新設されるということがなかった。
それに対して、コンビニのトイレがこれまでの公衆トイレ、公共トイレを代替する役割を担っているのだろうということで、それを我々は“新たな公共トイレ”と勝手に名付けて研究課題にした。
コンビニは、長時間営業で夜も使える。集客が見込めるところに機動的に出店する。都心では徒歩圏内、半径500mに1軒というような高密度が期待できる。さらには、屋外に大きくトイレマークを掲示して、トイレの存在を周知するような積極性もある。
研究の始まりの頃、2005年だったと思うが、災害時に郵便局とかガソリンスタンドと合わせて、コンビニも飲料水やトイレを提供する協定を自治体と結ぶようになった。
ただ、課題も当時からいろいろあった。場所の状況に即したトイレを整備しにくい。男女共用の便器が一つだけというところがあって、使い勝手がよくないとか、あるいは、民間の施設なので、設置と維持管理のコストの問題もある。
さらには協定を結んでいても、災害時に電気が来ない、水が来ない、下水が利用できないなどということが予想できる。そういうものに対して何か公的に助成とか対策を打てないのかなというのをいまだに思い続けている。
【2.コンビニトイレの現状。研究で得られた知見】
2005年から12年間、卒業論文で17人、修士論文で6人がコンビニを対象にして研究をやってきた。
(2-1:新たな公共トイレの出現)
最初は2005年の卒論で、「新たな公共トイレの出現。コンビニエンスストアのトイレ開放」というタイトル。
名古屋市全域で、公園に設置された公衆トイレとコンビニの分布図を作って比較した。
名古屋市の都心部では、公園が少ないのに対して、高密度にコンビニが立地している。
公衆トイレがカバーするエリアと、コンビニがカバーするエリアが、補完し合っていることがわかった。
このときは1週間ぐらい、曜日ごとにどれぐらいの人が使っているかを目視で調べた。
調査したコンビニでは、おおよそ100人から150人ぐらいの利用があるということがわかった。
トイレの利用者は男性が8割、女性が2割だった。他の資料によると、公園の公衆トイレ利用者の男女比は8対2、駅の公共トイレの男女比は7対3。百貨店の場合は男女比が逆転をして3対7になっている。
このコンビニの8対2ということから、百貨店と同じ商業施設なのに、公園や駅とか、いわゆる公衆トイレ、公共トイレに近いような利用がされているのではないかということを結論付けた。
さらに、利用時間によって大便小便の区分をしてみると、およそ8割が小便、2割が大便だというようなことになった。先ほどと同じ資料では、公園のトイレや駅のトイレも大小の比率が8対2だったので、利用のされ方も、従来の公共トイレ、公衆トイレに近いのではないかということがわかった。
(2-2:全数調査2007年・2013年)
その後、トイレが設置されているのか、それが開放されているのかということを、1軒1軒調べた。
2007年、名古屋市全体 977店舗の中でトイレが利用できるのが776店ということで、全体の79%。その中で24時間利用できるのは739店で、全体の76%だった。
その6年後、2013年に再度調査すると、名古屋市全体1099店舗の中でトイレが利用できるのが957店ということで、全体の87%に増加。24時間利用できるのは944店で、全体の86%と大きく増加していた。
名古屋市は16区あって、区ごとにトイレの開放状況が違う。都心の繁華街である中区と、中心部に近い少し高級な住宅地である東区は、開放店舗が少ない。万引きとか利用マナーの低下というのが繁華街で起きているのではないかと推定した。
2007年の調査では、洋式1器が44.5%で多かったが、改修、新築、建て替えの結果、2013年の調査で最も多いのは洋式2器だった。和式が淘汰されて、新設されるときに洋式2器がどんどん増えていることがわかった。
店舗には、戸建ての店舗とテナントの店舗があるが、建物の一部に入るテナントの場合は面積に制約があり、洋式1器が多いのに対して、新設の戸建てでは洋式2器とかあるいは小便器併設が増えている様子もつかめた。
女性専用ということに力を入れている様子がうかがえ、8割以上の店舗に女性専用のブースが設置されていた。
手を洗ったり身だしなみを整える前室はスペース的にもコスト的にも負担が大きいが、増えてきているということもわかった。
(2-3:トイレの利用実態)
次に、利用実態を調べた。2008年に幹線道路沿い、住宅街立地の2店舗で、5ヶ月間、ドアにセンサーをつけて調べた。
日平均として、およそ150人がトイレを利用しており、男女比は7対3ないしは8対2だった。
ブース占有時間は男性の方が短めで、2分を超えるものは男女共に多くない。
最初の研究でやったように、大小便の比率は2対8という傾向が、このときの調査でも確認できた。
季節的には、秋口に少し寒くなってくると利用客が急に増えるという傾向もつかめた。
曜日別の利用状況は立地によって大きく違う。オフィス街は土日が少なく、繁華街は土日が多くなる。
また、幹線道路沿いか住宅街かで、曜日別のトイレの利用状況が変わってくる。
夜でも数名だが使っている人がいて、24時間使えるということがメリットになっている。ただし、すごく少ない。
(2-4:利用者の属性)
利用者の属性について、1店舗で1週間、目視で調査した。
男性の方がトイレを利用する比率が高くて9.2%。それに対して女性は5.8%しか利用しない。
年代では、高齢女性の来店数が少なく、トイレの利用率も低いとうっすらと見えた。コンビニとしては高齢者、女性の来店を増やす対策をここ何年かとってきているが、トイレについてもそういう新たなターゲットを見据えた改修が求められると思う。
店に来る手段によっても、トイレの利用率が違う。自転車や徒歩で来た人よりも、バイクや自動車で来た人の方がトイレの利用率が高い。バイクや自動車は比較的遠方の人たちで、遠出してきたからトイレを使うと推測している。
これは、駐車場が多いような店舗にはトイレの数も増やす方がいいといった提案に繋がると思う。
(2-5:女性の利用)
女性のトイレの占有時間はおよそ90秒。前室のパウダーコーナーの利用時間も短い。コンビニのトイレはまだまだ女性にとっては滞在したくなる、あるいはパウダーコーナーを使いたくなるような施設にはなっていないということがわかる。
ちょうど調査対象にしていたお店が改修をして、トイレをそれまでの男女共用の洋式1器から、男女共用と女性専用の洋式2器に改修した。改修前の2009年では男女比が不明だが、1日に125人が利用していた。改修後の2010年には146人に増え、内訳は男女共用が110人、女性専用が36人となった。
2014年と2015年には公共トイレの選択理由についての調査をやった。
大学1年生から大学院生まで、120人に聞いた。男女比はほぼ同数。
外に出て使うとき、どういうトイレだったら使いたいか、使いたくないかを言葉で聞いた。
おおむね、綺麗さ、気兼ねなく使える、利便性が高いという点が重視されていた。
コンビニトイレを若者はよく使っているが、使わないときの理由としては、汚いというのもあるが、買い物をしないと気まずい、店員に声をかけたくない、男女共用である、客や店員の目が気になるといった理由だった。
トイレの場所や使う際の気持ちについて、模型を使った実験でコンビニ店の好ましい場所にトイレを配置してもらった上で、配置の理由を言葉で抽出してみた。
男性20人、女性20人にやった結果、言葉の抽出では、男性の場合は、客同士の気まずさ、店員に対する気まずさ、買い物をしないと思われる気まずさなどが出てきた。
女性の場合は、やはり人の目という点が強く現れてきている。
模型の配置実験の結果からは、男性は店員に見られる位置だと気まずさを感じていた。女性も、店員と非常に近いところだと気まずさを感じる、感じないのは店員から遠くてうっすらとしか気配が感じられないようなところだとわかってきた。
トイレの配置について聞いてみると、男女とも、一番奥が女性専用、一番手前が男性専用、真ん中が共用という並びが一番気まずさを感じないということだった。
女性は男性が前を通らないということに安心感を持っているが、男性の場合は、前を通ると怪しまれるのではないかという点で気まずさというか、不安感を持っている。
トイレをどこに配置すればいいのかの結果と合せてみると、商品棚がレジからの目隠しになっている位置に、通路としての前室があって、男性専用、共用、女性専用という配置が一番利用に気まずさを感じにくいという結果になった。
(2-6:バリアフリー)
名古屋市にある1122店舗の中で、車いすマークをつけている109店舗について、寸法を測った。
店舗の扉は自動式引き戸が30%、手動式開き戸が70%。また、便房の前室や便房自体の扉は85%が外開き戸だった。
車いすマークをつけているような店舗でも、車いす使用者が店に入るのもトイレを使うのも大変な現状が見える。
さらには通路幅について、売り場の通路としては26%が80センチを切っているし、前室の扉の幅は71%が80センチを切っている。さらに前室の通路も23%が80センチを切っている。
便房の扉についても、80センチ未満のものが109店舗中7店舗あった。
車いす使用者用便房の寸法については2店舗が設計標準を満足しており、39店舗が少し狭めの簡易便房という区分を満足している。スペースの問題もあって、ゆったりとした多目的トイレを作ることができていない様子がわかる。
多目的トイレの便座の高さは、乗り移りやすさという点から一般よりも、50ミリ程度高くなっているのに対して、コンビニのトイレの便座は標準のものがほとんどだった。1店舗だけ415ミリだったが、他は370ミリ程度という標準の高さだった。
これは、狭さと合わせて利用のしづらさに繋がる可能性があると思う。
【3.今後の展開】
(3-1:トイレの快適さによる差別化・集客)
トイレを快適にすることで、他店舗や他業態と差別化して、集客に結び付ける。デパートとも違う、サービスエリアとも違う、コンビニトイレならではの快適さを考え、集客に結びつける方策を常に考えていかなければいけないと思う。
(3-2:維持管理のしやすさ、洗浄水量の削減策)
維持管理がしやすい、さらには洗浄水量のような水光熱費を削減できるような策も考える必要がある。
戸建て店舗では水平な屋根があるので、雨水を集めたり、太陽光パネルをつけたりしやすい。
ただ都心では平家の屋根は日陰になりやすく、太陽光発電は難しい。
雨水利用については、屋根で集めるのは面積が不足。駐車場にしている地面で水を集めるのはなかなか困難。
(3-3:多様な利用者の支援:多目的トイレの設置)
何らかのバリアを感じる人たちへの利用のしやすさを考えていかなければならない。少し大きな多目的トイレを独立して設置したらいいのではないか。
(3-4:災害時の被災者支援)
災害時の被災者支援、帰宅支援について、自治体と協定を結んでいるが、災害時に本当に機能するのか懸念がある。
(3-5:市民トイレとしての認知と公的支援)
コンビニのトイレが新たな公共トイレとして長続きするためには、少し自治体からの助成などがあった方がいいと思っている。
水使用量の削減案について、あるチェーン店では、小便器を付けるという改修をよくやっていた。
店によって違うが、男性用小便器をつけるだけで使用水量が14%から17%削減できる。
これは維持管理とか、使用時間とかの点でもメリットが多いのではないかと思う。
トイレが心配で行動範囲を広げにくい人たちにとっては、コンビニに多目的トイレがあると非常に有効だと思う。駐車場があって自動車が停められるとか、繁華街の人が多いところにたくさん店舗があるということからも、メリットが大きいと思う。
調査ではトイレの扉が外開きのドアが多かったが、引き戸とか、予算に余裕があれば自動ドアだと使いやすい。
子ども対応ができているというのもすごくいいことなのではないかと思っている。
コンビニは、使う人の属性が偏っているので、機能だけを追求したデザインよりも、少しそれを隠すような意匠的な配慮がされていて、多くの人に違和感のない空間だといいと思う。
コンビニのトイレが災害時に果たして機能するのか、不安がある。帰宅支援とか災害被災者支援について、災害時のインフラの状況をきちんと考えていかなければならない。
最後に、コンビニのトイレを公共トイレとして位置づけるためにはどういう助成が必要なのかについて話したい。
神戸の異人館街にトイレがないので、その周辺の民間施設のトイレに対して、神戸市はトイレットペーパーや清掃に対する負担を少し助成していた。これが関東にも広がって、各地に観光トイレのような制度が今も存続している。
東京都千代田区では「ちよだ安心トイレ」という制度を作った。協力事業者に対して維持管理費用の一部として、区が3万円を支払った。ただしオリンピック期間限定で、残念ながら今はなくなっている。
自治体によっては、金銭的な助成はなく、「公共トイレ協力店」というステッカーを貼るだけとのところもあるが、果たしてこういうことで、コンビのトイレが公共トイレとして存続できるのか。事業者が喜んで提供するようになるのかには疑問がある。
30店舗のオーナーにヒアリングをした。
利用者のマナーについて聞くと、「悪い」「どちらとかといえば悪い」が、3分の2を占めている。チェーン店の本部からトイレを貸し出すように言われているが、「やめたい」「どちらかといえば、貸したくない」というのが4割あった。
店舗側の本音として、3分の1から半分近くは負担を感じている。利用者のマナーに疑問を感じている。
自治体によっては公共トイレとして位置づけようという動きがあるが、一方で、提供者の負担は少なくない。
設置のスペース、清掃や洗浄水の負担、トイレットペーパーの盗難、万引を隠す危険性などがある。さらにここ数年は感染症対策で利用を停止している店舗も多い。
これらを解決していくためには集客力、利便性のさらなる向上に結びつくコンビニトイレを新たに考えていく段階に来ているのではないかと思う。
維持管理費用に対する、何らかの負担の分散がなされてほしい。さらに、公共トイレとはいえ、民間施設を無償で利用させてもらっているということを十分意識して、利用者のマナーを向上させる。そんなことが実現したとき、コンビニのトイレが新たな公共トイレとして、利用者に対する快適さを提供し続けることができるのではないかと考えている。
【質疑】(抜粋)
(川内)HOさんから質問。「日本のコンビニで、トイレの有無で収益面での差があるか」。
(小松)なかなかこのデータは外に出てこない。コンビニのオーナーとかチェーン店の本部ではかなり調べていると思うが、我々の学術的な対象としては調べ切れていない。
(川内)コンビニのトイレを貸し出したくないという気持ちの方が結構いるという話があったが、それ以上に貸し出してもいいとか貸し出したいというのが6割ぐらいあった。綺麗に使ってくれないという実態があるにも関わらず、貸し出したいという意向が上回っているのはなぜか。
(小松)郊外の、幹線道路沿いの駐車場が広い店ではほとんどトイレマークを外に大きく掲示している。それは、徒歩や自転車で来た人よりもバイクや自動車で来た人の方が、トイレの利用率が倍ほど多かったということと関係があると思っている。トイレが来店の動機になって、購買に繋がっているということを、オーナー側が認めているのではないかと思う。
(川内)TOさんからの情報。「阪神淡路の震災時に、緊急的に発電機と仮設トイレの設置要望がたくさん入った。その後、コンビニによっては災害協定を結んで発電機とトイレの供給を速やかに行えるように意識しているところも出てきた。非常用電源は長時間使えないので、常用で使えるような発電機も検討されている。冷蔵庫が使えなくなると、コンビニの商品も販売できなくなってしまうものが多くなり、コンビニそのものの災害対策が必要となってきた」。
次にKAさんから「高齢女性のトイレ利用が少ないのは、商品の入れ替わりが激しくて高齢の方にはあまりコンビニが行きたくない店だということは考えられないか」。
(小松)一つは高齢女性の来店者数そのものが少ないというところがある。コンビニも高齢者あるいは女性を増やそうということで商品の内容を変えたりして、かなり増えてきていると思う。
私達が調べたときには、来店者数も少ないが、トイレの利用率も低いということが出てきたので、そもそもトイレを使いに来るという意識がないのではないか、あるいはあったとしても、何らかの「気まずさ」を感じているのではないかと考えている。(川内)先ほどの話でも、特に女性がコンビニのトイレ利用に抵抗を感じているということだったが、20代の女性については、男性と同じぐらいあまり抵抗を感じていないということだった。高齢になるほど、申し訳ないという気持ちが強くなっているのかもしれない。
SIさんからは、「コンビニトイレを公衆トイレにしてもらうにあたって、自治体はトイレットペーパー代と水道代以外にやはり清掃費用も出すべきではないか。トイレ掃除が嫌でアルバイトを嫌がる人が多いということを聞いたことがある。プロの方にちゃんと、普通の人では気がつかないような汚れをとってもらうべきではないか」。
(小松)神戸市が市民トイレ制度で助成制度を始めたのは何十年も前のことなので、民間施設を公に使ってもらおうということに対して自治体が何らかの負担をするという考えは、最近のことではないと思う。
アルバイトがやりたがらないと聞いているので、トイレ清掃がアルバイトの長続きしない要因にはなっているのかなと思う。
(川内)コンビニが公衆トイレとして提供してくれる場合には、行政から派遣した清掃員が巡回して清掃するというような制度をきちんとやらないと、自治体としても考えが安易ではないかということになる。
都心部に公衆トイレを新しく作ろうとしたらものすごい費用がかかるので、はるかに費用的にも安上がりだと思う。
TAさんからは「私もコンビニでバイトをしていたが、トイレ清掃は嫌だった。私の時代はまだコンビニトイレが当たり前ではなかったので、トイレがお店の倉庫の奥にあり、物を盗まれることもあった」ということで、トイレについて嫌な思い出しかない様子。確かにアルバイトをしている若い人たちはトイレ掃除をやりたがらないというのがあるのかもしれない。そういう点では先ほどのSIさんのご意見にあったように、コンビニを公衆トイレとして公開する場合は、プロの清掃というのを仕組みとして組み込んでおかないと、なかなかコンビニとしても人のやりくりとかが難しくなるという感じがする。
(小松)トイレ清掃専門の人が巡回するとか、いろんな対策が考えられると思う。レジを打ちながら商品を出しながらトイレの掃除もやるというのはかなり負担が大きくて、バイトもオーナーも、かなりな負担を感じているのではないかと思う。
(川内)コンビニで、トイレを男性、女性それから男女共用と造ると、トイレに面積を取られて売り場面積が減る。それに対してのコンビニ側の抵抗はあまりないのか?
(小松)スペースとしては駐車台数1台分と考えると、敷地の広いところではそんなに負担ではないのかもしれない。
昔のドライブインみたいに外にもトイレを置くという考えもある。
(川内)ITAさんからは「渋谷の透明トイレは使っていないときはガラスが透明になって中が見えるため、汚くしづらくモラル維持になっているのではないか。このように、建築として汚しにくいトイレを造って、使用者のモラル維持をすることも一つの策ではないか」。
(小松)コンビニでも外にトイレをつけたいが、外だと維持管理が大変だというのはよく聞く話。屋外トイレの共通の問題として、工事現場や災害時の仮設トイレなども含めて考えていけるかなと思う。
(川内)コンビニは場所だけ貸すけれども、維持管理については自治体が体制をつくるという形を考えないと、安易にコンビニに全部お任せでは問題があるという感じがする。
(小松)コンビニはトイレのスペースを用意するので、自治体がそこにユニットを据えるという考え。
外に置くと、安全面や維持管理面のデメリットが多いと思うが、別棟にして駐車場1台分か2台分を自治体に場所貸しをして賃料をもらうというのが一番シンプルでいいのではないかと思う。
(川内)ITさんから「男性アルバイトにとって女性の生理用のナプキンとかを処分するのは嫌なのだと聞いた」。
MUさんから「コンビニのトイレの有料化に関してはどのようにお考えか」。
(小松)例えば、コピー機を使うときには10円取られるというところを考えると、同じように施設を使うわけだから入るときに10円払うというのもありかなと思う。特に電子マネーだと簡単だと思う。なので、有料化は本当にやった方がいい、やれる話なのではないかなと思っている。ただ、本当にそれでいろんなものが解決できるのかは、はっきりお答えできない。
(川内)秋葉原の駅前のトイレは有料にしているが、維持管理の費用には全然足らないという話があって、一方で利用客、特に女性がすごく激減するらしい。
(KOさん)千代田区では、一般のトイレには月に10万円がかかっている。秋葉原のトイレは案内人も兼ねた人がいるので、月に150万ぐらいかかっている。秋葉原のトイレは1回当たり100円取っているが、75万ぐらいしか入ってこないので、残りは千代田区が補填している。
(川内)一つは、有料化するかどうかということ。そしてもう一つは有料化するとしたら値段を幾らにするかということ。
有料化しても維持管理の費用に全然足りないのであれば、焼け石に水ではないか。
(KAさん)トイレが詰まったりしたとき、本部との契約によっては、オーナーが自腹を切っている場合もあると聞いている。
コンビニのオーナーは、トイレのメンテナンス費用についてどういうふうに思っているのだろうか。
(小松)調査をやった時点では、ヒアリングができていない。当時は、水の使用量、紙の使用量が問題なのかなと思っていたが、トイレ協会に関わって、メンテナンスがすごく大きな部分なのだと、今頃になって気づいている。
(KAさん)以前、コンビニの本部に掃除口付きの便器を提案したことがあったが、詰まったとしても、店員が掃除口から手を入れて異物を除去するというのは多分やらない。やらせたら辞めてしまう。本部からは、詰まりにくいトイレがいいとか、トイレつまり多発店では節水型ではなく、今までと同じように10リッターぐらい流せる便器がないのかという相談もある。
(川内)経費削減では節水というのも重要だが、今のKAさんからの話だと、節水とは逆行するようなものが求められる可能性があるということだろうと思う。
SUさんから「有料トイレと無料トイレを選択できればいいと思う。有料は200円取っても使う人は多いと思う」。
(AZさん)金額の件もあるが、自治体が公衆トイレとして活用したいのであれば、まずは自治体が考えるべきだと思う。
100円か、200円かという具体的な金額はわからないが、過渡期の中でいろんな選択肢でやってみるということを考えると、トイレそのものを差別化して有料化するという方法もあるのではないかと思う。
(川内)HOさんからは「ヨーロッパの有料トイレは50セントから2ユーロ幅。特に北欧は高い」との情報。
(HOさん)ヨーロッパでは、トイレはお金を払うものという、自転車の駐輪料金と同じような感覚で使っている感じがする。
(川内)日本では、今までも有料トイレは作られてきたけれど、成功しているところはまずないというのが現状ではある。
(UEさん)男性が腰掛け式便器で立ち小便をすることが汚れの大きな原因の一つと考えられる。男性によるトイレの汚れはひどくて、やはり我々自身が使い方をよく考えておかないといけないなと思う。
(川内)先ほどの報告でも、小便器を併設したところが結構あるということだったが、増えている傾向なのか。
(小松)あるコンビニチェーンの新設店舗は全て男性用小便器がついていた。本部の方針として男性用小便器のメリット、清掃とか水の使用量とか利用時間とかを十分認識しているのだろうと思う。
2007年と2013年に調査をやって10年経っている。その10年間で、コンビニのトイレがどう変化したのかを知りたいと思っている。ゼミの学生がやりたいと言えば、また調査をできるかもしれない。