グッドトイレ選奨2019 審査結果

講評

日本トイレ協会運営委員 川内美彦

 今回のグッドトイレ選奨には14 作品の応募があり、グッドトイレ選奨5 点と、⼊選5 点が選ばれた。応募作品には様々な調査や社会的活動等が含まれているが、特定のトイレの設計事例はなかった。これはグッドトイレ選奨にも、その前⾝のグッドトイレ10 にもなかった、初めてのことだという。

選奨に選ばれた5 作品は⼦どもたちへの教育、災害時の対策、⾏政の取り組み、運営管理といった、さまざまな実践の報告であった。
「和歌⼭県⽥辺市⼤坊⼩学校での取り組み」は、今後の⼈材育成の⼀つとして⼤いに期待できる。⼦どもたちへの期待の⼤きさが共感を集めた。
「渋⾕区トイレ環境整備基本⽅針」の策定については、今後にどういった具体的施策が展開されるかが不明なので⽅向性も成果も未知数であるが、トイレに特化した⽅針作りは⼤いに期待できる。
「タブレットを⽤いたトイレの⻑時間利⽤対策」は、徐々に増えつつあるトイレの滞在時間に対して、どことなくユーモアのある対策で好感が持てた。
「40feet トイレコンテナ…」はこのトイレが持つ機動性と柔軟性の⾼さに対して、⼤きな期待が寄せられたものと思う。
「お客さまから頂く要望等についての取り組み」は利⽤客からの様々な要望や意⾒に対して真摯な姿勢で臨んでいる姿が好感を呼んだものと思われる。
以上、どれも社会的要請の⾼いテーマについて、それぞれの知恵を絞っての取り組みで、グッドトイレ選奨にふさわしい作品であった。

そういう点では⼊選の5 作品も社会的問題に直結した取り組みであった。
「公共トイレの利⽤実態に関する研究」は同様のシリーズ的な研究の第3 弾と⾔える報告である。「トイレアクセサリーを売って国際⽀援」は便器をテーマにしたアクセサリーを販売し、収益を発展途上国のトイレ整備に寄付するという取り組みである。この2 作品は、着想は⾯⽩いがまだ成果が出ているわけではないので、今後に期待したいということで、⼊選の中でも特に〈努⼒賞〉とした。
「3 次元レーザセンサを⽤いた迷い⾏動の実態把握」は匿名性を担保しながら⼈の⾏動が把握できるという研究の基礎的段階で、今後に発展の可能性がある。「世界中のすべての⼈にやさしいトイレの導⼊」はタブレットを⽤いた多⾔語やピクト表⽰で、衛⽣⾯での⼼配もあるが、興味深い実験である。「トイレの清掃対応の迅速化に寄与する清掃依頼ボタンの改良」は利⽤者が掃除の必要な場所を⾒つけ通報するという、これまでにない着想のメンテナンスシステムである。

今回応募のあった14 作品のうち中⽇本⾼速道路関連が6 件を数える。同社やそれに関連する若い⼈たちからは毎年、さまざまな応募作品が寄せられ熱気を感じるし、グッドトイレ選奨への貢献も⼤きい。願わくは、同社の中でこれらの研究がどのように体系づけられており、それぞれの研究が総合的にどう活⽤されているのかが伝えられれば、より⼀層の理解につながるのではないかと感じる。