第3回セミナー「うんと知りたいトイレの話」報告

第3回「非常時のトイレ/在宅避難と避難所のトイレ事情」(2021年6月17日)

【第1部】 災害時の備え・忘れていませんか?“携帯・簡易トイレ
(災害・仮設トイレ研究会、副代表幹事、携帯・簡易トイレWGリーダー ㈱エクセルシア代表取締役、足立寛一)
30年以内に大きな地震が来る可能性80%。下水管が壊れると、トイレが使えなくなる。
<備蓄の実態>
1日あたり5回くらいトイレに行く。家族3人、1ヶ月で浴槽一杯ぐらいになる。
水洗トイレは下水処理場がやられると、3~4ヶ月使えないんじゃないかと言われている。
家庭にたまった処理後の排泄物の収集も追いつかない。
2017年から2020年にインターネットでアンケートをとった。
家庭での災害時用トイレの備蓄は2017年から2020年で微増。
タワーマンションはエレベーターが止まるので非常用品の備蓄は特に重要。
非常食は47. 6%の方がもう備蓄しているのにトイレは約20%。まだまだ。
備蓄しているトイレの量は、2020年で平均25.3回分だが、排泄は1日5回から7回で、下水道の復旧は月単位になるので、実際はすごい回数分のトイレが必要。
災害用トイレを使ったことがあるという人が14%。説明書を読んだ人が6割弱。説明書を読んだことがないという人が3割程度いる。可能なら、試しに使ってほしい。
行政は、発災直後はなかなかトイレまで手が回らない。災害が起きてすぐ使える携帯トイレの準備をしてほしい。
既に備蓄している人が19.5%。備蓄しようと思っている方は近々といつかを合わせて33.8%、備蓄するつもりはないという方が17.8%、わからないという方も28.9%。災害時に水洗トイレが止まり、なかなか支援は来ない。災害トイレの備蓄が非常に重要だということを皆さんに知っていただくことが非常に大切だなと思っている。

【第2部】 知っておこう 災害時の避難所トイレ事情
(災害・仮設トイレ研究会、副代表幹事、仮設トイレWGリーダー 日野興業㈱ 谷本亘)
災害用トイレには携帯トイレ、簡易トイレ、マンホールトイレ、仮設トイレといろいろある。
仮設トイレは発災後3日目ぐらいから届き始める。避難者の数に対して十分な数の仮設トイレは、3日では揃わない。
<すぐには届かない>
(理由1)道路の寸断、社会情勢の混乱、また時には燃料の確保も厳しい。輸送は民間のトラックを使う。道路状況、必要な数など、最低限必要な情報が後手、後手になってくる。
熊本地震では経済産業省から全て洋式トイレで出荷してほしいという要請があった。
熊本の令和2年7月豪雨ではバリアフリートイレが初めて設置された。仮設トイレは普段はイベントや建設現場で使われており、バリアフリートイレの保有比率は0. 1%しかない。
(理由2)仮設トイレの主要なメーカーは5、6社で静岡あたりに多い。岡山にも一社。500キロ以上離れた場所だと輸送に最低2日間は必要。長距離ドライバーも元々人手不足。
(理由3)大きな仮設トイレを運ぶ平ボデータイプのトラックが減ってきていて、全体の20%しかない。
仮設トイレの第1陣は、レンタル会社の余剰在庫から出荷される。現在流通している仮設トイレは元々和式トイレが洋式トイレよりも多いのだが、余剰在庫は人気のない和式の確率が非常に高い。仮設トイレでは和式74%、洋式26%というデータがある。国交省はトイレの洋式化に取り組んでいる。快適トイレという。これに倣って、全国の多くの自治体でも快適トイレへの予算化を行う事例が増えるような動きが出ている。
<仮設トイレの設置>
(設置1)仮設トイレの設置場所を事前に決めておくということが非常に大事。
衛生面と防犯上の観点から、配置計画には女性の参加が望ましい。それからバキュームカーが入れる場所。学校の場合、渡り廊下が結構大きな障害となることがある。
(設置2)適切な管理。
使用する人たちが清掃を分担して行う。装備、薬品、方法について、全国ビルメンテナンス協会のマニュアルがある。清掃の担当を決めていないと、あっという間に仮設トイレは汚くなってしまう。
(設置3)トイレ周りそれに関連する対策が必要。
一つは臭いと虫対策。特に夏場はひどくなる。適切な薬剤を使う必要がある。その次が、照明の確保。仮設トイレは照明が不十分な場合が多い。電気もない場合がある。そして給水や汲み取り等の手配がないと使えないということになる。
<災害協定>
近年、全国の自治体が仮設トイレについてメーカーやレンタル会社と災害協定を締結している。ただ、締結して安心するのではなく、実際に防災訓練やセミナーを開催して使える形で維持することが重要。
自助・共助・公助の割合は7対2対1。まずは自助。最低3日、できれば7日は自分たちの携帯簡易トイレの備蓄でしのぐ。共助は自治体や近所、町内会での訓練や、避難所での協力のこと。公助では国や自治体が災害協定等を結んで、事前にしっかり予行演習しておくこと。
災害の状態によっては、この自助共助公助の中身やバランスは変わる。

【質疑】
足立:日本が一番防災用品が進んでいるかなと思う。海外のものは山登りとかキャンプ場で使う用途のもので、凝固剤で固めるか防臭袋的なものがほとんどになっている
谷本:2020年の災害用トイレ備蓄に関する調査報告書は、トイレ協会から入っていただいてもいいが、災害・仮設トイレ研究会のホームページにアップしている。
谷本:バリアフリートイレのマップが見られるアプリはあるが、災害時の仮設トイレについては、自治体によってはホームページ等に、予定場所という形で挙げているところがあると聞いている。またラインなんかを使って地域の方にそういった情報を流しているというような話も聞いている。仮設トイレに位置情報の装置をつけるというのは費用対効果の面では難しい。将来的に小型化して電池もいらなくなると、在庫の管理とか含めてそういうマップもできるのだと思う。
谷本:仮設のバリアフリートイレには、設計基準やJIS規格といったものはない。ただし、新しいタイプのバリアフリートイレが投入されている傾向がある。
足立:家庭用の備蓄トイレは備蓄期限をどのメーカーも設けている。凝固剤を包んでいるフィルムで決まってくる。ただ食料と違い、備蓄期限が切れたものでも使って問題はない。
足立:使用した後の処分は、環境省としては焼却ゴミだと言っているが、最終的には各自治体に任せられていて、各自治体の焼却炉の能力とか年数とかで決まる。自治体共通のルールはまだない。

※第3回うんと知りたいトイレの話要約Wordデータ(読み上げソフト対応の為)